「いのち知らず」

  • シアタードラマシティ 2列27番
  • 作・演出 岩松了

岩松了さん新作。勝地涼、仲野太賀、光石研と良いキャストが並んでいたので見に行ってきました。

例によってなかなか一筋縄ではいかない台詞回しが序盤からポンポン飛び出し、振り落とされそう…と思っていると突然ピタッと照準が合ったみたいにすべてがクリアになるっていうこの感覚、岩松作品だなあ~~と実感。そして、岩松さんの作品(だけじゃないけど)に出ている岩松了さんご本人を見て、いや結局アンタがいちばんうまいやないかい!って舌を巻くやつも出ました。ほんとにうまい。なんなんでしょうあの人。

わりと共依存ぽい関係にある若者ふたりが、住み込みで働いている医療施設で行われている「非人道的な実験」の噂を耳にし、そこから二人の運命がわかれていく…という展開なんだけど、表面の事項を愚直に信じるか、はたまた陰謀論的なものに振り回されて軸足を見失うのか、あれ、わりと今だな…と思う展開になったりしたのが印象に残ってます。あと最初のシーンで舞台の下手側に立っている太賀くんを溶暗させるあの演出、あれすごかったな。紗幕みたいなものをうまく使ってるんだと思うけど、映像でよくある、背景に人物がとけていくような感じ。間近で見てあの効果だから、後方の人にはほんとにゆっくり背景に溶けていったように見えたんじゃないか。

ちょっとクールめな勝地くんにストレートな太賀くん、という役回りで、太賀くんは今こういう役やらせて右に出るものなしぐらい、ニンだなあという感じがありましたね。

カーテンコールでキャストからひと言ずつご挨拶があり、勝地くんは新感線の公演で大阪にきたときの成志先輩が酔って電柱にぶつかり電柱に平謝りしたというエピを紹介し「ぼくもこんな演劇人になるのかなと思った」と仰ってました。そして岩松さんは「もう40年ぐらい大阪に芝居を打ちにきている」と。「昔大阪でカーテンコールのときに『つまんねえぞ!』ってヤジが飛んで、それ以来カテコ恐怖症に」「大杉漣さんが『声が小さい!』って客席から怒られたり。ぼくが声張らなくていいって言ったばっかりに、悪いことした」などなど楽しいエピソードを披露され、「それ近鉄小劇場での話なんですけどね」。近鉄小劇場、の名前がでた瞬間の客席の声ともいえない声、空気のゆれ、よかったなあ。みんなの心にまだあの劇場があるってことだよね。ちなみに岩松さん、40年前からって話をキャストにしたら、太賀くんに「その頃新幹線あったんですか?」と聞かれ、劇団のことかと思ったら走る新幹線のほうだった!そんな昔じゃない!とすべらん話を披露しておいででした。