「命、ギガ長スW【ギガ組】」

久しぶりの近鉄アート館。なんかそれだけで心がオープンになる感じがある。あの2階にあがっていく階段のとことか、見える風景とか、あのサイズ感。べつに座り心地のいい椅子でもないのに、落ち着く。
そういう効果があったのかなかったのか、初演も拝見しましたけど、いっそう沁みたというか、ますますこの戯曲の好き度があがったというか。長ス組も気になったんですが、あのラストのセリフを安藤玉恵さんで聴きたい一心でギガ組を選択。

1時間45分て、それなりの尺ですけど、いやマジであっという間だったな。アサダさんとオサムが「ドキュメンタリで撮られること」についてやり合うところ、なんか松尾さんのスタンスの結晶みたいなセリフが多くて心のメモ帳がいそがしい。「無職に理由を求めるな」ってすげえパンチラインよね。きれいな無職、きれいなアル中なんです。まざりっけなしの。そういうものを大衆は受け止められない。理由がほしい。理由というか、物語が。でもそんなものは高みの見物だからこその「物語の押し付け」にすぎない。

母親が風呂場で溺れるオサムの手を引っ張るシーン、あの「混ざるのよ、混ざるのよ」から、安藤玉恵さん演じるあの役柄の、というか、あの舞台の上に渦巻いてるエモーションが、自分の中に一気に流れ込んでくるような感覚があって、なんかもう、泣いちゃったんですよね。生きてなきゃだめなのよ、やっぱりまだ手が離せない、ただ、いたずらに、引き延ばすだけでもいいので。

いやー、すごい台詞書くなあホント。混ざるのよ、にしても、風呂場と電話の話にしても、劇中で最初に振ったときとのあの高低差がむちゃくちゃ効いてる。

初演キャストである安藤玉恵さんの素晴らしさは言うまでもなし。宮藤さん、「悪霊」とか松尾さんのあとに同じ役をやるケースあるけど、通底するものはあってもけっこうカラーが違いますよね。1人変わるとこれだけ色合いが変わるんだから、長ス組はかなり感触の違う作品になってるんだろうなあ。

松尾スズキさんの作品をそれなりに観てきていて、好きな作品もちろんたくさんあるんだけど、同時に「私は芯をとらえられてないな」と思うものもたくさんあるんですよね。で、私は松尾さんのいい観客じゃないのかもな~なんて思ったりもしてたんだけど、この「命、ギガ長ス」はなんというか、すごく自分にジャストというか、すげえ、好きだ、と思える作品だなと再演を見て確信しました。ここしばらく自分の体力の低下もあって以前のように積極的な観劇スケジュールを組めてなかったけど、この作品のおかげで少し前のめりになれそう。観て良かったです。