「ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス」


ストレンジ先生2作目!監督はサム・ライミ。公開前に監督インタビューで「けっこうちゃんとホラーに作ったから怖がられないかしんぱい」的なことを仰っていたので、ホラー苦手な私は若干ビビりながらの鑑賞でしたけど、結果「あっ、こういうのなら大丈夫!」と最後まで満喫させていただけましたよ。

私はディズニープラスのドラマシリーズも追ってはいるので、「ワンダ&ヴィジョン」も「What If…?」も視聴済みなんですが、「ワンダ&ヴィジョン」はまさにドラマエンドからそのままつながるという感じで、これドラマ追ってない人にはどうとらえられるんだろと若干不安にもなりつつ。とはいえ今回監督色の際立った作品にしたことが奏功して、一本の映画としてはMCUファンムービー的な色合い薄めではあったと思う。

ストレンジはマルチバースの世界で、守っていた少女の信頼を裏切りそのパワーを奪うことで「大義」を叶えようとするが、返り打ちにあって死亡する…という夢を見る。かつての恋人の結婚式に参列し、自分の中にある彼女への未練とうまく向きあうことのできないストレンジだが、そこに夢の中だったはずの少女と怪物が現れて…というのが物語の発端。

この結婚式でストレンジが言われる「自分でメスを握らないと気が済まない」という言葉は割とこの映画の大きな背骨で、すごくざっくりくくるとこれはストレンジがいかにそこから脱却するか、という話でもあるなあと思った。フェーズ4では「マルチバース」が大きなキー項目になり(これまではインフィニティストーンがキー項目だった)、ますますストレンジの役割が大きくなるけど、これを見越して(?)カンバーバッチをストレンジに選んだファイギはほんと見る目がありすぎる。

予告でも出ていたワンダとストレンジの会話から一気にワンダの計画が暴かれていくところ、そうきたか~~~ってなったし、今までの作品では常に「迷う」立ち位置に置かれ続けていた彼女が、ここにきてとうとう「迷わない」思いを手に入れて、ただその方向性はいろんなものを捻じ曲げてしまうものだったというのがなんともつらい。しかし、迷わないワンダはこんなにも敵なしなのか…!ともなったね。思えば最初に家族を奪われ弟と生きてきたのにその弟も奪われ、愛する人を世界のために手にかけ、やっと得た(と信じた)幸福も砂上の楼閣のように消える…って確かにこう並べるだけでもハードモードすぎる。闇落ちと安易に言いたくない気持ちにもなろうってもんです。

敵が強大かつ容赦がないので、そういう意味でも過去作に関係なくストーリーラインを楽しめた感ありますね。アクションのアイデアも豊富で、個人的にあの音符のところむちゃくちゃ好きだったし、ドリームウォークを「どの世界のストレンジにやらせるか?」ってなってから出てくるアイデアがまさに監督の真骨頂って感じだった。あのラストバトル、クライマックスを主演にあの恰好でやらせるの、これが監督カラーでなくてなんのかという感じ。憑りついてくる悪霊どもを従えてマントにしちゃうところとか、なんかむしょうに滾ってしまったじゃないか。

そうそう、イルミナティのシーンは「うおー!(雄叫び)」と「うわぁ…(ドン引き)」が交互に訪れるツートンカラーの縞模様の波という感じでした。キャプテンの名セリフが出て歓喜したし、チャールズが出たのもそりゃもちろんプロフェッサーー!!ってなったんだけど、あんな…あんな最期…ううう…いやまあそれだけワンダ最強だからしょうがないかもなんだけど…しかしその人を使っておいてその仕打ち…とか思っちゃう私…。

これまでの自分の人生はもちろん、世界の趨勢が決まる状況でも、「最後の決断」を自分がしてきたストレンジ。それはものすごい重圧でもあるけれど、裏返せば自分の運命を他者に委ねられない、ということでもあった。けれどあのワンダとの対決の中で、アメリカ・チャベスからそのパワーを奪うことをせず、自らの運命を託す。彼がそういう選択を最後にとる、ということが、ちゃんと一本の映画の中で描かれているところ、観客がそれを信じられるところがこの映画でいちばんよかったところでした。最後にね、ウォンに一礼するのもいい。ソーサラースプリームへの敬意ある礼。ウォンは今作とにかく最高だったなーー、ストレンジ先生とのバディ感めっちゃいいよね。

これでワンダは退場してしまうのかな。あのチャールズが読み取った、閉じ込められたワンダのシーン切なかったな。あのすべてをコントロールする驚異のパワーを手に、迷いのない彼女が還ってくる姿をまた見たい気持ちもあるけども。でもって、ストレンジに最後話しかけた女性は何!?シャーリーズ・セロンだよね!?彼女もMCU参戦なの!?はーあまだまだお楽しみが続きますなMCU