「ドライブインカリフォルニア」日本総合悲劇協会 Vol.7

18年ぶりの再演だそうです。18年!?ウソでしょ!?ついこの間(もういい)。公式サイトの松尾さんのコメントにもあるように、松尾作品の中ではかなり入りやすい作品ではあると思う。今回はアキオに阿部サダヲ。サダヲちゃん、満を持してのドライブインカリフォルニア初登場である。

18年前の再演を観た時にも思ったけど、フラットに事実だけを書いたら、そうとうにエグイ話なのに、なぜか明るさがあるというか、優しさを感じるというか、ドライブインカリフォルニアにはそういう雰囲気があるんですよね。今回はさらにそれを強く感じたな。結局ここに出てくる人、やさしい人しかいない。でもアキオとケイスケがその優しさによって相手を縛っていたように、それぞれの優しさがいつの間にか相手の首に縄をかけている。だからこそ、関係を壊そうとしてくる人間がここには必要だったんだなっていう。吉野朔美さんの「いたいけな瞳」の中の、恋人の帰りをずっと待っている女が恋人の死を知らされて、「ありがとう あの人より大きな力が私を動かしてくれるのを 私ずっと待っていたのよ」と言うシーンを思い出したりしました。

泣けないエミコがお葬式の前に、なんとか泣こう、泣きたいってがんばるところ、今回やたらと胸にくるものがあって、確かに、これでもう十分だとおもえるほど、優しさと滑稽さに満ちた名シーンだなと改めて実感したりして。

マイラブ小松和重さんがケイスケ役で、いっやーーーーめちゃくちゃ良くなかったですか?あのスレンダーさといい、いかにも押しに弱そうな感じといい、弱そうなのに絶対に折れそうにないふてぶてしさが滲むところといい。あの夜中の電話、それまでが絵にかいたような温厚な佇まいで通してるから、狂気すら感じさせて最高だった。いる理由を作りだそうとする人間と、出ていかない理由を作りだそうとする人間、今回のアキオとケイスケの描き方すごくよかったなあ。

谷章の若松、あのいい声爆弾を如何なく発揮していて、猫背さんとのコンビネーションも最高でいや笑った笑った。いい声といい男っぷりがこゆるぎもしない若松最高でした。あと何と言っても初演から不動の田村たがめさんですよ!マジで芝居の芯だったね。この世界を体現してた。でもって変わらないといえば「裂かないで♪ジーパンだけは♪」のウケの大きさよ。あと意味もなく頭を回る回る。

座組としても今回ものすごくそれぞれの役者さんの関係性がまとまってて、そういう意味では歪な、ゴツゴツ感は薄まった部分もあるのかもしれない。だからこそいつにも増して飲み込みやすかったのかも。ドライブインカリフォルニアに生きている彼らの年齢は変わらないけど、演じている人たちの年齢は変わっていくわけで、再演を重ねるたびにこうして「しんどさ」だけではなく「優しさのしんどさ」が観客に伝わっていくのも、長くやっているがゆえの醍醐味なのかもしれないですね。