「七月大歌舞伎 昼の部」

  • 松竹座 1階8列18番

「八重桐廓噺」、孝太郎さんの八重桐で。以前観た時は時蔵さんだったかな。廓噺の語りの面白さから一転、後半突然スーパーヒーロー展開になるっていう温度差がすごい。こういう作品観るたび歌舞伎って自由だなー!って思います。お前が討とうとしてる親の仇はもうこの間妹がやってもうてんねん!\ガーン/ってなるのもそんな展開あり?ってなるし。白菊の壱太郎さん、出のところとかぐっと際立っててよかった。

「浮かれ心中」。原作は井上ひさしの「手鎖心中」。以前どっかで見たな、と自分のブログで検索したら6年前に明治座で拝見してましたね。そのときのおすずは菊之助さんだったな。中村屋さんご兄弟久しぶりの大阪ということで、観客も待ってた感すごかった。勘九郎さんの栄次郎が最初の台詞喋った時近くの席のおばさまがむちゃくちゃわかりやすく息を呑んでて、そっくりやって思わはったんやろうな~と。

栄次郎は愛嬌があって劇中でも皆に好かれてる(まあ、金払いのよさもある)けど、これ彼がやってることって早い話が迷惑系youtuberとなんも変わらんなという気もした。そんなこと言ったら「戯作」にかけた井上ひさし御大の想いはどこに!って感じだけど、彼は徹頭徹尾「良い作品を書いて名を売る」ってベクトルには向かわないもんね。有名になるための手段のエスカレーション、もちろんそれをシニカルに見せるのが戯曲の趣向なんだけど、もはやそういう人が「戯作の中だけ」ではないのが昨今。国会に出ない国会議員が選挙で選ばれるぐらいですからね。

「籠釣瓶」のパロディ的要素がふんだんにあるところはすごく好き。幸四郎さんの太助で「家に帰るがいやになった」が、七之助さんの七三の笑みが、勘九郎さんの「おいらん、そりゃあんまり袖なかろうぜ」が聞けるという御馳走。勘九郎さん6年前も「やりたいね~」つってたけど、マジのマジで待ってますんでこれ。そういえば、吉右衛門さまは佐野次郎左衛門もよくやってらっしゃったけど、幸四郎さんはそっちの方もやりたい気持ちあるのかな。私の中では幸四郎さんは栄之丞なんですけども!(知らんがな)

勘三郎さんが栄次郎をやったときは三津五郎さんが太助をされたそうだけど、勘九郎さんと幸四郎さんにも単なる共演者以上の同志感があって、このコンビで見られたのは嬉しかったな。七之助さんのおすず&帚木、いやそりゃいいに決まってますってば。七の八ツ橋も待ってるよ。最後のちゅう乗りも含めて中村屋さんらしい、楽しさにちょっとのセンチメンタルがまぶされた良き一幕でした。