「市川海老蔵改め十三代目市川團十郎白猿襲名披露 十二月大歌舞伎昼の部」

本当だったら2020年オリンピックイヤーに予定されていた團十郎襲名、コロナ禍の煽りをうけて2022年年末ようやく実現の運び。とにかく無事に興行ができてなによりでした。

「鞘當」。隅から隅まで座組が豪華でさすが襲名興行!を実感する一幕。松緑さんと幸四郎さんの顔合わせ、私は久しぶりだったので嬉しかったな。偶数日でしたので中車さんの留男でした。

「京鹿子娘二人道成寺」。菊之助さんと勘九郎さんの白拍子花子で。いや演目発表になったとき飛び上がりましたよ、何を隠そう菊之助さんと勘九郎さんのコンビ大好き侍ですからして。おふたりでやった「積恋雪関扉」、私の勘九郎さんのベスト演目五指には入りますもん。そんなふたりで道成寺!マジか!ありがとう襲名!

その期待に違わぬ見応えじゅうぶんの舞台でした。ああ堪能。勘九郎さんの出のところ、顔の表情から色が抜け落ちてるというか、お能の面みたいというか、なんか「容れ物」の佇まいでゾクゾクしたなあ。花道でセリ出してくる菊之助さんとふたりになり、パッと鐘を仰ぎ見るところでスパッと魂が入ったような。

とにかく勘九郎さんの踊りを観たいよう観たいようと願っていたので、その乾いた心に沁みわたるようだ…と全編うっとり眺めていたんですが、そこにさらに勘九郎さんとは異質な、お互い高いレベルの、でも違う次元にいるかのような菊之助さんと踊ることで愉悦感がさらに倍に。菊之助さんの女形やっぱりいいよねえ。またふたりで関の扉やりませんか…?

今回は押戻しもあって、十三代目團十郎待ってましたのお目見え。やっぱり成田屋さんには独特のめでたい感があってよい。大満足の一幕でした。

「毛抜」。八代目新之助さんのお披露目。9歳でこの演目、フラットに見て立派につとめられてたなーと思います。しかし、正直な感想を言えばわたしにはつれえ時間だった、彼がどうとかでは決してなく。座組のみなさまは素晴らしかったしね!なんでよりによってこの演目ってのもあるし、この演目やるんならそれを楽しませる雰囲気にならんとこっちは乗ってけないってのもある。一生懸命はもちろん人の心を打つけれど、誰が見ても素晴らしいと思うものは一生懸命を見せることではないってやつだ。もっと大きくなって次に出会う時を楽しみにしています。