「ジョン王」

彩の国シェイクスピアシリーズとして一昨年上演予定だったがコロナ禍で中止となり、いったん「終わりよければすべてよし」で全37作上演で幕引き…となるところだったが、いや上演してないんじゃ終われないじゃん、ということで改めて2年越しに上演の運びと相成りました。

どうしたって点が辛くならざるを得ない、というのが正直なところで、まず脚本がやっぱり弱い。いやシェイクスピア御大に何を言うかって話ですけど、1幕と比べて2幕の淡泊さヤバないっすか。そりゃ他の綺羅星の如き作品群ある中で、上演回数が減じているというのもむべなるかなです。

あとその脚本の弱さ薄さを演出がカバーできてない。カバーしようとしてうまくいっていないといった方がいいか。ほんとねえ、既存の曲を劇中に登場させて突然歌わせるのは諸刃の剣だってばっちゃが言ってなかったかい?いや言ってたはず。かっこよくやれば相当かっこいいし効果的にもなり得るけど、正直後半「歌うんかい」「また歌わせるんかい」「頼むもう歌わせないでくれ」という気持ちでいっぱいでした。歌のうまいへたではなく、単純に見せ方がダサい。曲のアレンジも全部とおりいっぺんだし。

小栗くんの出とハケの場面でいかにもな若者風にさせるのも、突然降ってくる人形も、あの城門に描かれた文様が照明の絞りで菊の御紋に見えてくるところも、今、まさに戦争というものの足音が近くにあることを意識した見せ方だと思いますが、思った以上の効果をあげられていないという感じがしました。

役者はなべて好演で、舞台上であのシェイクスピアの長台詞をものして情熱的に演じる彼らを見るのは楽しかった。吉田鋼太郎さんはいわずもがな、小栗くんも堂々としたもんでした。もっと違う作品で観たかったぜーいという気もちょっとしたり。あとは高橋努さんと玉置玲央さんも印象的。あ、もちろん京蔵さんとじゅねちゃんもよかった、さすがのケレン味

古典でも現代劇でも、音(音楽)を味方につける演出家もいれば、そうでない演出家ももちろんいて、どっちがいい悪いってものではない(たとえば野田さんは最高に優れた演出家ですが、音楽を味方につけるタイプではない)んですよね。でもその特性ってかなり大きいし、今回の作品はどうもその特性の部分で演出家と作品、そして私と演出家の感覚が合わなかったなという印象です。