「平成中村座姫路城公演 第二部」

姫路城三の丸庭園に平成中村座がやってきたよー!というわけで行ってきました。三の丸庭園、さあどうぞここに小屋を建てて姫路城を借景にしてくださいといわんばかりの抜群のロケーションにあり、「お城借景シリーズ」の中でも指折りの光景になったんじゃないかと思います。

第二部は「棒しばり」と「天守物語」。棒しばりは勘九郎さんの次郎冠者、橋之助さんの太郎冠者。お馴染みの演目ではあるものの、歌舞伎座や松竹座で見る時とはまた違う客席の新鮮なリアクションも相俟ってとても楽しめた。次郎冠者が手を縛られるところでどよめくし、どうにかして酒を呑もうとするふたりのあれやこれやがとにかくよくウケる。扇雀さんと勘九郎さんがとにかく楽しそうで、最後の3人入り乱れるところ、ふたりとも「いやー楽しくってしょうがねえなあ!」みたいな顔つきで観ているこっちもふわふわと浮かれた気分に。こういう場に立ち会うとやっぱり巡業とか地方公演の意味って大きいよなあと思いますね。

天守物語」。まさに戯曲の舞台となった姫路城を臨む公演で、しかも七之助さんの富姫。これは見たいと思わせるやつ。2009年に歌舞伎座玉三郎さんの富姫、海老蔵(当時)さんの図書之助、勘太郎(当時)さんの亀姫で拝見したことがありますが、今回は玉三郎さまが演出も担当。その甲斐あってというか、七之助さん、ところどころゾクッとするほど玉さまの匂いを感じさせた富姫でした。特に声音ね!ここまで似てるなと思ったのは「刺青奇偶」以来かもしれない。

とはいえ、「似てるな」だけでなく、端々にどうしてもこぼれ出る七之助さんらしさが溢れていて、それがまたよかった。自分らしさを全開に出そう!というよりも教えをなぞってなお零れ出るものが本当のその人の個性なのかなと思います。あの図書之助を前にしての高まりや振る舞いは七之助さんならではの熱が感じられてすばらしかったな。

前半の亀姫とのいちゃつきぶり、その耽美さ、耽美な中の残酷さ、まさに泉鏡花の筆の冴えという感じで、ここは前回も見ていて本当に楽しかったし、七之助さん鶴松さんコンビでの百合百合しい佇まいもたいへん美味しくいただくことができました。虎之介さんの図書之助も文字通り若く清廉、という若武者ぶりでよかったです。

なにより、舞台となる姫路城をまさに眼前にしてのこの公演、やっぱりご当地のものを観るって数字では測れない良さがありますよね。なんというか、全体のシンクロ率があがる感じがある。最後に舞台後方が開き、姫路城の天守閣が聳えるのを見るのはなんというか、言葉にできない満足度がありました。素晴らしい場に立ち会わせてもらえたなという気持ちでいっぱいです。