「ヴァニティーズ」

去年ストーンズ・イン・ヒズ・ポケッツを見たときの読後感、じゃないや観劇後感と非常に似ておりますな。なんというか「苦すぎ!」っつーか「コメディ・・・なの?」っつーか。向こうではストレートプレイってこういう苦みのある方が好まれるんだろうか。1960年代からの、仲良し女性3人組の人生を3場にわけて描いていますが、無知だったり怖い者知らずだったり、傲慢だったりする3人をそれでも微笑ましく笑って見ていられる1場と2場はともかく、3場の「女」ならではの見栄や孤独が噴出し、それによって傷つけあう一部始終はちょっと胸につらすぎる。まあ私が彼女らとちょうど同年代っていうのもあるんだろうとは思うんですけれども。

個人的にはある程度お話には毒があった方が好みなんですが、見に行くときの心構えが「コメディ」になってたもんで、ちょっと切り替えに苦労したというところでしょうか。できればもう1場、もうちょっと年を経た3人の「これから」を見てみたかった気もします。これもまあ、私が3場の彼女らとちょうど同い年だっていうのと関係あるんでしょうね。だって、やっぱり「その先」を見てみたいと思うじゃないですか。

今回の企画は篠井さん、深沢さん、大谷さんの3人がそれぞれ女装で演じるという趣向があったおかげで、女がやったらイヤらしすぎるセリフもあっさり笑い飛ばせるものになっていたなあと。最初は「女装のおかしさ」みたいなのが客の方にも優先していたみたいだけど、中盤以降そんなことはまったく思わせないハマりっぷりは見事。篠井さんは言わずもがな、深沢さんのかわいさも予想が出来ましたが、あの男臭い大谷さんの豹変ぶりには思わず拍手。

大阪公演初日だったんですが、前日まで福岡、で急遽決まった追加公演、っていうのと関係あるのかないのか、スライドが降りてこないとかいうトラブルもあったりして、万全な感じではなかったかなあ。セリフも一部怪しい部分があったりして。まあ多少怪しくても、お三方の建て直しの上手さもプロだなあとか思ったりしておりました。