「桜の園」

ケラさん×チェーホフシリーズいよいよ完結の第4作。もとは2020年に上演予定だったけど、コロナ禍で(稽古もやっていたのに)中止を余儀なくされ、満を持しての上演。ラネーフスカヤに天海祐希さんを迎えるなど、豪華&盤石のキャスト。

チェーホフが「桜の園」を喜劇として書いたというのは有名な話ですが、まあ本作に限らずチェーホフ自身は常に喜劇を書いているつもりだったという話、昔は「なるほど、そういう目で見てみよう」と思ったこともあったけど、何本かチェーホフの舞台を見るようになって思うのは、これはどうやら視点の置き方が違うんじゃないかということ。いいことかどうかは別にして、私たちは「主人公」にある種の共感、シンパシーをもたらす作劇に慣れ親しみ過ぎているけれど、チェーホフはそこがむちゃくちゃドライだし、そこ(シンパシー)をドラマの基本にしていないよなあ、って思うんですよね。

ケラさんはそのあたりをうまく掬い取って演出されていたとは思うけど、個人的にその空気にうまく乗れたかというとそうでもなかったというのが残念なところ。天海さんのセンター力に私が引っ張られ過ぎたかもしれない。美しさはもちろん文句はないが、没落という、いまにも崩れ去る脆さを感じにくかったかなあ。キャストのなかでは、なんといってもロパーヒンを演じた荒川良々さんが出色の出来であったと思う。三幕の芝居は素晴らしかった。あと井上芳雄さんが出演されているのをすっかり失念していて、あれ、なんか、井上王子の声がする…?と思ったらトロフィーモフが井上さんだった。なんか意外!こんなに恋のさや当てみたいな場面が多い作品だったんだなあというのもちょっとした発見でした。

舞台美術がきわめて素晴らしく、転換のたびに新鮮な驚きをもたらしてくれてさすがでした。松井るみさん、いつなんどきでも期待を裏切らない!

2024年のベスト

新年あけましておめでとうございます!2025年もどうぞよろしくお願いいたします。昨年は観劇納めも18日と早く、観劇初めは11日までないということでこのタイミングで恒例の1年振り返りをやっておきます!ところで今新年って変換しようとしたら芯ねんって第1候補に出てきたんだけどなんやねん芯ねんて。

観劇編

総観劇本数44本(リピート含まず)。昨年より減ったなー。9月までに36本観ててこの本数なので、理由は推して知るべし*1。例年通り良かった芝居5選(見た順)。

次点入れるとしたら「カムフロムアウェイ」「旅館じゃないんだからさ」あたりかな。こうして最終的にチョイスしたくなる作品をみると私が観劇という体験に何を求めているのか、がすごく如実に出てるなーという気がします。ベストを選ぶとしたら「ライカムで待っとく」か、「おちょこの傘持つメリーポピンズ」かな。「ライカムで待っとく」は初演時に読売演劇賞優秀作品賞に選ばれていて、うおー再演あったら絶対見に行く!と鼻息を荒くしていたやつ。評判に違わぬ傑作で、今後も大勢の人が体験できるよう再演を重ねられることを祈らずにはいられない。これを見て以降、「寄り添う」という言葉を言えなくなったよ私は。

「おちょこの傘持つメリーポピンズ」、豪華な、あまりにも豪華なキャストが紫テントに集結するということで話題を呼んだけど、それこそ野田さんや勘三郎さん、鴻上さんやいのうえさん、私の演劇原体験を形作った人たちが、この唐十郎が生んだ世界にどれだけ影響を受けてきたのかってことを文字通り肌で「わからせ」られるやつでした。まじですごかったね。劇的というものの濃縮還元汁を浴びせられたような体験でした。トヨエツと勘九郎さんがタバコの火を分け合うあの瞬間、私の目よカメラになれ!と思うほど忘れられない一瞬でした。

MONOの新作は年始早々に見たけれどいつまでも「良さ」が胸に残る佳作でしたし、モダンスイマーズはなんか最近見たら必ずベストに入っているのでは感。「おどる夫婦」楽しみです。朝日2024を入れているのはそりゃね、わたしは第三舞台で産湯を使った女ですからして。いやでも時事へのアップデートのすごさ、どんなフレッシュなネタも惜しみなく消費するそのスピード感、そして刷新された若手主体の輝きと第三舞台ガチ勢だからこそ小躍りしたくなる作品の出来栄えでしたし、そりゃベストにも選んじゃいますというものです。

映画編

総鑑賞本数23本。減ったなーと思ったけど去年よりは微増なのか。というわけで良かった作品3本(見た順)。

観劇編と違ってこっちは全く傾向がない(笑)。ただ、これ5選になると「ディア・イングランド」や「ブック・オブ・ダスト」が入ってきそうで、それもう映画ちゃいますやん!という感じになってしまうのが痛いところ。「オッペンハイマー」や「アイアンクロー」も良かったですけど、3選に絞るとこんな感じ。

ベストを選ぶともうぶっちぎりで「ザ・モーティヴ&ザ・キュー」を選んでしまうわけですが、いやーもうマジでサム・メンデスすごすぎる。一幕ラスト、二幕ラストそれぞれの、ハムレットの名セリフにサブテキストをふんだんにこめてあんなふうに響かせるなんて、才能が…才能がこわい!本当に観てよかった。ありがとうナショナルシアターライブ。

「ホールドオーバーズ」はいまサブスクでも見られるようになってるみたいで、確かにクリスマスの時期に見たいやつよなこれ!と思います。この映画が描ききった「大人とは何をすべきか」ってことの鮮やかな示し方、ずっと心に残るし、彼らの「これから」も含めて観客に希望と祈りと優しさを残してくれる作品だったなと。「デッドプールウルヴァリン」はお祭り騒ぎといえばお祭り騒ぎ、打ち上げ花火といえば打ち上げ花火なんだけど、きょうびちゃんと祭りを盛り上げてどデカい花火を打ち上げるのすら覚束ない作品もある中でシッカリ仕事をしきったのがまずすごい。これだけいろんな作品の、いろんなユニバースに顔を出してきたキャラたちをちゃんと見せ切ったのもすばらしい。特大ヒットも頷ける楽しさ面白さに大満足でした。

2025年もどうぞよろしくお願いします!

*1:10月からTHE YELLOW MONKEYのツアースタート

「主婦 米田時江の免疫力がアップするコント6本」ウーマンリブvol.16

夏の「ふくすけ」が体調不良で観に行けなかったので、なんだか大人計画成分に触れるのが久しぶりなような感じ。今回キャストが片桐はいりさん、勝地涼くん、北香那さんと伊勢志摩さん皆川さん宮藤さんとかなりミニマムな編成。

最初からある程度共通した世界観で、バラバラのようで緩くつながるコントが最後には元のところに戻るという構成。役者も少数精鋭で実に見やすかった。はいりさんと皆川さんは中でもパワーが違う感じがあったな。なんか見ているだけでありがたいつーか…拝みたくなるつーか…。

コントとして印象に残ってるのは旅館のやつかなー!いやすぎる感じ、最後のオチも含めてもうあれ半分ホラーなのよ。はいりさんの仲居がマジ凶悪。そしてそれを見ないようにしようとする彼氏もえぐい。逆ストーカーのやつも好きだった。北さんのブチ切れっぷり見事だったし、舞台の中央で怠惰な身体を晒すとは!こう!みたいな感じで横たわり続ける皆川さんさすがすぎるのよ。

これ、東京ではスズナリでやったんですよね。終演後カーテンコールの代わりのプチアフタートークがあったんですけど(その代わりカーテンコールしないよ!の宣言つき)、そこで大阪公演の劇場のデカさに触れられてて、いやまあそうよねー!とは思った。IMPホールべつにデカいわけじゃないけど(いわゆる中劇場サイズより小さい)、スズナリに比べたらそりゃでかいよ。でもって、スズナリに合わせて作られた作品を6倍のデカいハコでやったらそりゃ感覚も違ってくるよ。

私が拝見したのは大阪公演初日でしたが、宮藤さん舞台上でいろいろミスがあったみたいで、アフタートークで開口一番「ごめんねおれ今日全然だめだったね!」って速攻謝ってました。そんな宮藤さんに皆川さんが言った「もーーー宮藤さんカワイイ!な~んにもできないんだから~~~!!!」にむちゃくちゃ笑わせてもらいました。宮藤さん、愛されキャラだね!(どんな結論)

「十二月大歌舞伎 第二部」

もろもろスケジュールの都合上、今年は二部のみ拝見してきました。まず「盲長屋梅加賀鳶」から。松緑さんと勘九郎さんがガッツリ共演、かつ見たことない演目というのが二部を優先した理由。

鳶が出てくる演目っていうと「め組の喧嘩」を思い出しちゃうけど、この鳶の粋なさま、江戸っ子のある意味アイドルでもあったんだろうなって思いますね。ずらっと花道に並んだ鳶らの七五調の台詞、実に華やか。でもって勘九郎さんの演じる松蔵、頭からおしりまで「カッコイイ」の要素に全振りしました、というようなお役で二部観に来てヨカッタァ~~!!と心の中で大喝采。なにより、「いいのか?いいんだな!」の台詞がまさにめ組の辰五郎を彷彿とさせて文字通り胸熱だった。

愛嬌のある松緑さんの道玄と勘九郎さんの松蔵による伊勢屋でのやりとり、このゆすりたかりに来た悪党が悪事を指摘されてなお居座る…みたいな展開もあるあるだけど、なにしろ松蔵は徹頭徹尾カッコいいので、もう永遠に道玄とああでもないこうでもないしてもらってかまわんのだが!?というぐらい、ファンには楽しい一幕でした。

「鷺娘」。この演目はどうしても玉三郎さんが手がけられた時の印象が深く刻まれてます、七之助さん、鷺娘をやるのは三度目とのことなんですが、私は今回が初見。なんで前2回観てないんだろ(知らんがな)。

七之助さん、玉三郎さんが手がけたお役をやるとき、びっくりするほど似てる(なぞってる)と思う時もあるんだけど、この鷺娘はそういう印象を持たなかったな~。七之助さんのカラーがよく出ているというか。儚さよりも念を感じるというか。同じ「美しさ」でもいろんな種類があると実感できる一幕でした。一足先に目の正月!

「朧の森に棲む鬼」歌舞伎NEXT

初演17年前ですか~!「阿弖流為」に続く歌舞伎NEXTですが、新感線の作品で歌舞伎にするなら、というと必ず声が上がっていた本作が満を持しての登場。

初演の時に「新感線が好き、とかいのうえ作品が好き、とかそういうことと関係なしに極めてよく出来た一本」って感想を書いてるんだけど、17年の時を経てますますその思いを強くした感じです。いや本当、むちゃくちゃよくできてる。話の骨格にシェイクスピア作品を引っ張っているのがしっかり骨太の物語になって活きているし、そこに歌舞伎ならでは、の趣向の数々を散りばめて、どこを見ても何を見ても見どころしかないという一本に仕上がっているなと。休憩時間を含む4時間の上演時間、文字通りあっという間。

今回はライを幸四郎さんと松也さんのダブルキャストで、私が拝見したのは幸四郎さんのライ。いやまあ1回しか見られないとなったら幸四郎さん選んじゃいますって。まだ初日開けて間がなかったこともあり、若干台詞の怪しさはあったものの、それを差っ引いてもライがのし上がればのし上がるほど輝くのが幸四郎さんですよね。本当にこれ何度も言ってますけど、こんなに「ナチュラルボーン人の上に立つ者」仕草がはまる人そうそういない。私はシキブをハメるときのライがむちゃくちゃ好きなんですけど、一幕では敬語だったツナへの言葉遣いが尊大になり、シキブに甘い言葉をささやいて先王を殺させ、かつあの衆目の面前で文字通りの猿芝居を打ってみせる肚の座りよう。マジでこんなにもいけすかないのにこんなにも魅力しかない役をここまで輝かせるの、この人しかいないんじゃないか!?

今回、ツナに時蔵さん、マダレに猿弥さんをもってこれたのも大きいですね。時蔵さん、本当になんでこの人こんなに何やらせてもうまいのか。あと声が良い。女方がやることによって醸されるツナの「色」がより強調されていた気がします。猿弥さんのマダレも言うことない~~~もう好きしかない。キャラクターとして食わせ物感ありつつも芯のあるマダレ、本当にむちゃくちゃニンでした。後半のドラマを盛り上げ、かつライの「呪」を破る要素でもあるシュテンの染五郎くん、キンタの右近さんもしっかりはまっていてよかったです。あと私はこの作品のキンタがむちゃくちゃ好きだなと改めて思いましたね。あの二幕の再登場のところ、本当に本作イチの劇的な展開だし、「だが俺は生きている、生きて兄貴に剣を向ける!」の台詞、最高に心があがる瞬間でした。

ラストの展開、個人的には初演の円環構造(落ち武者狩りをしていたライが最後には狩られてその血を森に流して死んでいく)が好みですけれども、歌舞伎NEXTというからにはこれぐらいド派手な展開があってもいいなと思いますし、あれができるのが歌舞伎の強みかなという気もいたします。

ダブルキャスト、ライでない日はサダミツで出演されるわけですが、松也さんのサダミツむちゃくちゃ楽しそうでしたね…(笑)これを見るともう片方のキャストもやっぱり見たくなっちゃう。松也さんのライも気になるし。しかし今回大阪公演がないんですよ~~~なんてこった。残念極まりない。

幸四郎さんと新感線、阿修羅城や髑髏城、アテルイももちろんエポックだったけれど、朧ほど幸四郎さんの特性に宛書きされた作品もないと思いますし、今後は今回松也さんがライを務めたようにいろんなキャストにバトンが渡るかもしれないですが、幸四郎さんのライを目撃できたこと、たぶんおばあになってもずっと自慢したくなると思います。

「ロボット・ドリームズ」


SNSをやっていなかったら私のアンテナには絶対にひっかかってないだろうな~という映画なので、こういう映画に足を運ぼうと思えるのは文字通りSNSの恩恵とも言える。上映時間約100分、全編台詞なし、ニューヨークの街で孤独に暮らす「ドッグ」とその友達のロボットの物語。監督・脚本はパブロ・ベルヘル。

全編台詞なしって今自分で書いてて「そういえばそうか」って改めて思うけど、台詞がないってことをまったく意識させないですよね。それぐらい、すべてのシーンが雄弁。孤独も、喜びも、分かち合う楽しさも、それを知った後のさらに深い孤独も、その孤独の果てに見る夢も。

思い合っているけれどずっと手を繋いでいられるわけじゃない、ということを考えるときに私はいつも小沢健二「さよならなんて云えないよ」の「本当はわかってる 二度と戻らない美しい日にいると そして静かに心は離れてゆくと」ってフレーズを思い出してしまうのだが、描かれるドッグとロボットの完ぺきな楽しさが美しければ美しいほど、そのあとのことを思ってなんだか苦しくなるような気持ちになったし、ロボットがあの砂浜で何度も見る夢と、その夢から覚めた時の現実の過酷さにたまらなくやるせない気持ちになってしまった。

ふたりがもう一度、もう一度会うことが出来たらって観客は考えてしまうけど、本当にいやになるほど現実は厳しくて、でもこの映画ではその先の、本当に魂のかけらが一瞬触れ合うような瞬間を描いてさらりと終わるので、う、うお~~~~~~~切ないけどこれで十分奇跡なような、いやでもやっぱりどうにかしてどうにかならないのか、いやいや今は離れてもこの曲と一緒に過ごした時間は永遠だからそれでいいのかとか、なんか情緒ぐっちゃぐちゃになって気がついたらエンディングだった。

それもこれも、アース・ウィンド&ファイヤーの「セプテンバー」があまりにも仕事をしすぎていて、Do you remember the 21st night of September?って、say do you remember,dancing in Septemberってもう、このふたりのことじゃん!!台詞はひとつもないけど、ぜんぶこの曲が言ってるじゃん!!!って思ったし、改めて偉大な楽曲だなと思い知らされた感。

わたしは孤独でいることにそれほど苦しさを感じていないタイプだとは思うけど、それでもドッグの冒頭の、意味もなくゲームをして無為な時間を過ごし、その無為さに落ち込むなんていうのはきっと誰もが経験したことがあるもので、そこからもうこの物語へのシンパシーが始まってるのが素晴らしい。

80年代のニューヨークなので、もちろんツインタワーがあり、オーシャンビーチは明らかにコニーアイランドで、古き良き…といっては語弊があるかもしれないけれど、ノスタルジー度合いもこのセンチメンタルな気持ちに拍車をかけていたなあと思います。

「そのいのち」

劇団「ちからわざ」を主宰する佐藤二朗さんがご自身で脚本執筆された作品。主なキャストは宮沢りえさんと佐藤二朗さん、そして物語の中心になる「花」の役をハンディキャップを持つ役者さんが演じており、兵庫公演は佳山明さん。東京公演で見た人のレビューで気になり、チケットをおさえた次第。

チラシのデザインとか、実際にハンディキャップを持つ方をキャスティングしていることとか、あと宮沢りえさんが出てるとか…という周辺情報からなんとなくヒューマンドラマ的な展開を予想していましたが、いやーいい意味で予想を裏切られたなっていう。私、役者としての佐藤二朗さんはそれこそ自転車キンクリートの「休むに似たり」の頃から記憶にありますが、脚本家として拝見するのは初めてかもしれない。人間の暗い部分というか、明るい暗い、どちらか一方の人間なんていなくて、どんな人にも暗さと明るさがマーブル模様のようになっていると思うけど、その通り一遍ではない人物の描き方、見せ方がすごくよかった。

障がい者である花と結婚した和清の底には優性思想が根強くはびこっていて、贖罪と言いながら常に「持たざる者」である花に情けをかけてやっている、ということしか彼のアイデンティティはない。見ているものには、実際に何も持っていないのは和清であり、花は決して持たざる者ではないということがわかるのだけど、和清だけはそれに気づかない。気づけない。気づこうとしない。

ヘルパーの里見と和清の過去の因縁の展開も予想外だったし、里見が超えてはいけない一線を超えることを決意するときの和清があまりにも醜悪で、これを自分で書いて自分で演じる二朗さんすげえな!と思っちゃいました。

りえちゃん演じる里見と佳山さん演じる花のなにげないやりとり、砕けた感じがすごくよかったなあ。花の「おうよ」って口癖すごく好き。「わたし性格わるいですよ」「性格悪い障がい者もいるって花さんに教えてもらいました」「言うねえ山田っち」とか、ああいう感じ。花があのあと、自分の実母の家族と暮らしていくこと、未来に対する不安はあっても、義父の悟の存在と、「やっかいかけます」「おたがいさま」のやりとりに少しだけ心が軽くなるラストも、よかった。花と和清、同情よりも憎しみの方が愛に近いのはそれはそうだと思うけど、でもああして和清に自分の心を踏んでもいいよ、と差し出し続けるのはやっぱり違うものね。

中村佳穂さんの「そのいのち」がこの戯曲の出発点らしいのですが、兵庫公演の千穐楽に中村佳穂さんご本人がお見えになっていて、佐藤二朗さんがご紹介しつつ、「冒頭で鼻歌で歌うのむちゃくちゃ緊張した」と仰っててほっこりしました。あとで思わず楽曲探して聴いちゃったよね。あとカーテンコールでスウィングとして笹野鈴々音さんの紹介があったんですが、久しぶりに拝見したけれど鈴々音さんの文字通り鈴を転がすような美しいお声、ご挨拶の真摯さに思わず聞き入るなど。シリアスな展開でありつつ、ところどころ会話の面白さで笑いもあり、その温度差がまた劇的な効果を生む…という良い循環がある舞台でした。観に行ってよかったです!