- SkyシアターMBS 2階2C列16番
- 作 アントン・チェーホフ 上演台本・演出 ケラリーノ・サンドロヴィッチ
ケラさん×チェーホフシリーズいよいよ完結の第4作。もとは2020年に上演予定だったけど、コロナ禍で(稽古もやっていたのに)中止を余儀なくされ、満を持しての上演。ラネーフスカヤに天海祐希さんを迎えるなど、豪華&盤石のキャスト。
チェーホフが「桜の園」を喜劇として書いたというのは有名な話ですが、まあ本作に限らずチェーホフ自身は常に喜劇を書いているつもりだったという話、昔は「なるほど、そういう目で見てみよう」と思ったこともあったけど、何本かチェーホフの舞台を見るようになって思うのは、これはどうやら視点の置き方が違うんじゃないかということ。いいことかどうかは別にして、私たちは「主人公」にある種の共感、シンパシーをもたらす作劇に慣れ親しみ過ぎているけれど、チェーホフはそこがむちゃくちゃドライだし、そこ(シンパシー)をドラマの基本にしていないよなあ、って思うんですよね。
ケラさんはそのあたりをうまく掬い取って演出されていたとは思うけど、個人的にその空気にうまく乗れたかというとそうでもなかったというのが残念なところ。天海さんのセンター力に私が引っ張られ過ぎたかもしれない。美しさはもちろん文句はないが、没落という、いまにも崩れ去る脆さを感じにくかったかなあ。キャストのなかでは、なんといってもロパーヒンを演じた荒川良々さんが出色の出来であったと思う。三幕の芝居は素晴らしかった。あと井上芳雄さんが出演されているのをすっかり失念していて、あれ、なんか、井上王子の声がする…?と思ったらトロフィーモフが井上さんだった。なんか意外!こんなに恋のさや当てみたいな場面が多い作品だったんだなあというのもちょっとした発見でした。
舞台美術がきわめて素晴らしく、転換のたびに新鮮な驚きをもたらしてくれてさすがでした。松井るみさん、いつなんどきでも期待を裏切らない!