「深呼吸する惑星」第三舞台

開場の10分前には劇場の前に着いたけれど、その時点ですでにかなりの人だかりで、劇場前に列が出来ていた。板垣さんがハンディを持ってそれを撮影していらっしゃる姿が見えた。たぶん、定時よりも早めに開場してくれたのではないかという気がする。ロビーはいっぱいの花。でもあれでも一部なんじゃないかなあ。客の入りが異常に早く、おそらく5分前にはほぼ全員が着席している状態だったのではないかと思います。カゲアナは鴻上さんでした。

具体的な芝居の内容に触れる前に書いておくと、終わった瞬間に私が思ったことは「楽しかった!」でした。本当に楽しかった。高揚しました。誤解を恐れずに言えば、それは私が初めて第三舞台を見たときの感覚となんだか近いような気さえしました。

人それぞれではありますが、パンフは終演後に読んだ方がいいのではないかな。あと、オープニングには絶対遅刻しないで。

以下ネタバレですが、直接的なことは若干避けてはみました。


WEBに残された言葉はどこへいくのか、という問いをきっかけに世界はジャンプし、まさに「SF」の世界が舞台になります。どこかの惑星、そこを管理統治する地球軍と、その星に生まれ育った異星人たちのコミニュティ。その惑星では地球人の異常な自殺率の高さが問題になり、一人の科学者がそれを解明しにやってくる。

今、自分で設定を書いてみて、SFやん!とひとりごちてしまいましたが、最初は若干面食らったものの、すぐにそれは気にならなくなりました。台詞の合間合間から、その惑星で語られることが「今」のこの国にたやすく置き換えられること(しかし徹頭徹尾具体的な台詞では語られないこと)がわかってくるからです。

今年の夏に虚構の劇団がやった「天使は瞳を閉じて」を見たときに、かつてはただの物語の設定だった「放射能」という言葉が、今やリアルなうえにもリアルに響いてしまうことに震撼しましたが、あの頃、言葉に出来ないけれど確かにあった不安、というようなものを描いていた鴻上さんは、しかし今その不安を、今誰もがはっきりと感じないではいられない不安を、ことさらに暴き立てるようなことはこの芝居ではしていませんでした。それは鴻上さんが歳をとったからでもあるし、そして震災後の今だからこそ、というのもあるのだろうと思う。

自分もこうしてWEBのうえに言葉を残す、ということを続けているからということもあるけれど、一生くんの最後の台詞には、なんともいえず胸に迫るものがありました。

たったひとりで世界を変えようとする男には記憶がなく、それはまさに祖国なき独立戦争そのものだったし、あちこちに散りばめられたキーワードはまさに第三舞台の、鴻上さんの作品のエッセンスばかりで、昔を懐かしむというよりは、自分が過去に受けた衝撃や衝動の匂いをたくさんかいでいるような感覚だったのかもなあと思ったりします。

役者さんは皆、とても緊張されていたようですが、そしてそれが如実に伝わるシーンもありましたが、でもこの日の客席は終始とても暖かかったです。腕組みして「どんなもんか見てやろう」というのではなくて、待ってたよ、という気持ちが客席を満たしていたんじゃないかなあ。いやあ、かつてマシーン小須田とまで言われたコスちゃんが!とかね、いやでもこれが年月ってやつだしある意味芝居の揺らぎというやつでもあるよなあと。しかし、観客席は観客席でかなり緊張していたとは思うので、舞台の上と下でなにやってんだよって感じですよね、ったくもーわたしもふくめてみんななんてかわいいファンなんだぜこんちくしょう。

第三舞台と言えば!なダンスシーンももちろんあって、ああしかし、舞台のドセンターで正面向いて見得をきる筧さんのあの姿、ほんとのけぞった私は。のけぞったし首かゆくなったし笑ったし、もーマジなんなんあのかっこよさ!正直一昨日からこっちその映像ばっかり頭のなかでハードリピートしてて誰かこれを止めてくれ!いや止めないで!みたいな一人上手状態。そして相変わらず美しい長野さんのダンス。というか女性陣3人の、あの時を止めたかのような輝き何!?あの盤石感何!?

大高さんも、小須田さんも、みんなそれぞれ「かつて」を彷彿とさせる台詞だったりキャラクターだったりで、あーこれは鴻上さんの、私たちへのサービス、お土産なのかなーなんて思うところもありましたが、しかしそれ以上にあの舞台に立ってる彼らが面白かったり格好良かったりとびきり輝いていたりするのが何よりすごい。でもって唯一の若手となった高橋一生くん、もうわたし最近彼に対する恋心がドンストップマイラブ恋を止めないで状態なので基本的に目がハートでしたが、それを差し引いても人外のかっこよさでした。なによりあの中であれだけに誠実につとめられる一生くんのタフさたるやだよ!

劇中で使われる楽曲がいくつか、すでに私のipodに入っている、わたしの大好きなアーティストの曲で、なんだかそういうのも新鮮というか、それはこの10年の間に、私の世界がそれだけ広がってきたってことでもあるんだよね、きっと。

カーテンコールの拍手はいつまでも鳴りやまず。たぶんなんにも段取りを決めていなかったと思われる、あわあわした(でもうれしそうな)舞台の上のみんなの顔を見てたら、泣けてくるどころか笑い出しそうになった、楽しすぎて。最後には、「パーティは引き際が肝心!」と諫められて終わるっていうね!

終演後にアンケート書いて、顔あげたら劇場中の壁にはりついてアンケート書くひとばっかりで、ロビーもそんな人であふれてて、あーそうだったそうだった、こういうのが終演後の風景だった!なんて、そんなこともうれしく、懐かしかったです。

私はこのあと大阪公演と福岡の千秋楽に行く予定だったのですが、もーなんつーか焼けぼっくいに火じゃないけど、完全に止まらないの弾む心はあああああ!って感じなので、無理矢理もう一回ぐらいどこかにねじ込むかもしれません。つまりはそんな気持ちにさせる舞台だったということです。そして何よりうれしいのは、この封印解除&解散公演をそういう気持ちで迎えられたということです。心からうれしい。おかえりなさい、第三舞台