この地上から


GWに「リンカーン」見てきました。予告編とかから勝手に南北戦争ものだと思い込んでたんだけど(まあ、それはもちろんそうなんだけど)、どうやらほとんど台詞劇らしいよというのを小耳に挟んであらそれなら面白そう、と足を運んできました。
物語の中心にあるのは合衆国憲法修正第13条を下院で通過させるための駆け引きとやりとりで、だからある意味とても地味な映画です。アメリカの法の及ぶところから奴隷制を永久に廃止する、その法案の成立に必要な票集め、説得、葛藤を描いている。そして当然のことながら、観客は皆この修正第13条が可決されたか、否決されたかを知っているわけです。歴史の事実として。
政治ドラマの駆け引きがとくべつ好きというわけではないんですけど、票固めの工作とか物理的精神的に反対派をオトしていく手管、さらには南北戦争終結と法案通過のタイミングなど、約一ヶ月間に焦点を絞ったドラマで見応えありました。

自分が物心ついたころには、もちろんざっくりしすぎた話ではありますけどリベラル=民主、保守=共和というイメージができあがっているので、この映画の中で奴隷制度廃止に強硬に反対し、彼らと自分たちとを「違う人間である」と声高に言い募る議員が民主党員であることにしばらく慣れませんでした。勉強不足ですねえ。しかし、今現在から過去を振り返れば、彼らの言っていることが偏見と差別意識に満ちたものだということはわかりますけれど、じゃあたとえば100年後から今を見たとき、自分たちが同じ轍を踏んでいないと言い切るのは難しいですよね。なにしろこの時代には女性にも選挙権がなかったんですから。
共和党急進派の議員が奴隷制を支持する民主党議員に対し「お前はウジ虫のような人間だが、たとえお前のような人間であっても法の前では平等に扱われるべきだ」と言い放つ演説が素晴らしかったです。
アカデミー賞を受賞したダニエル・デイ=ルイスが素晴らしいのはもちろんですが、国務長官役が私の好きなデヴィッド・ストラザーンだったのが嬉しかったな〜。