初演17年前ですか~!「阿弖流為」に続く歌舞伎NEXTですが、新感線の作品で歌舞伎にするなら、というと必ず声が上がっていた本作が満を持しての登場。
初演の時に「新感線が好き、とかいのうえ作品が好き、とかそういうことと関係なしに極めてよく出来た一本」って感想を書いてるんだけど、17年の時を経てますますその思いを強くした感じです。いや本当、むちゃくちゃよくできてる。話の骨格にシェイクスピア作品を引っ張っているのがしっかり骨太の物語になって活きているし、そこに歌舞伎ならでは、の趣向の数々を散りばめて、どこを見ても何を見ても見どころしかないという一本に仕上がっているなと。休憩時間を含む4時間の上演時間、文字通りあっという間。
今回はライを幸四郎さんと松也さんのダブルキャストで、私が拝見したのは幸四郎さんのライ。いやまあ1回しか見られないとなったら幸四郎さん選んじゃいますって。まだ初日開けて間がなかったこともあり、若干台詞の怪しさはあったものの、それを差っ引いてもライがのし上がればのし上がるほど輝くのが幸四郎さんですよね。本当にこれ何度も言ってますけど、こんなに「ナチュラルボーン人の上に立つ者」仕草がはまる人そうそういない。私はシキブをハメるときのライがむちゃくちゃ好きなんですけど、一幕では敬語だったツナへの言葉遣いが尊大になり、シキブに甘い言葉をささやいて先王を殺させ、かつあの衆目の面前で文字通りの猿芝居を打ってみせる肚の座りよう。マジでこんなにもいけすかないのにこんなにも魅力しかない役をここまで輝かせるの、この人しかいないんじゃないか!?
今回、ツナに時蔵さん、マダレに猿弥さんをもってこれたのも大きいですね。時蔵さん、本当になんでこの人こんなに何やらせてもうまいのか。あと声が良い。女方がやることによって醸されるツナの「色」がより強調されていた気がします。猿弥さんのマダレも言うことない~~~もう好きしかない。キャラクターとして食わせ物感ありつつも芯のあるマダレ、本当にむちゃくちゃニンでした。後半のドラマを盛り上げ、かつライの「呪」を破る要素でもあるシュテンの染五郎くん、キンタの右近さんもしっかりはまっていてよかったです。あと私はこの作品のキンタがむちゃくちゃ好きだなと改めて思いましたね。あの二幕の再登場のところ、本当に本作イチの劇的な展開だし、「だが俺は生きている、生きて兄貴に剣を向ける!」の台詞、最高に心があがる瞬間でした。
ラストの展開、個人的には初演の円環構造(落ち武者狩りをしていたライが最後には狩られてその血を森に流して死んでいく)が好みですけれども、歌舞伎NEXTというからにはこれぐらいド派手な展開があってもいいなと思いますし、あれができるのが歌舞伎の強みかなという気もいたします。
ダブルキャスト、ライでない日はサダミツで出演されるわけですが、松也さんのサダミツむちゃくちゃ楽しそうでしたね…(笑)これを見るともう片方のキャストもやっぱり見たくなっちゃう。松也さんのライも気になるし。しかし今回大阪公演がないんですよ~~~なんてこった。残念極まりない。
幸四郎さんと新感線、阿修羅城や髑髏城、アテルイももちろんエポックだったけれど、朧ほど幸四郎さんの特性に宛書きされた作品もないと思いますし、今後は今回松也さんがライを務めたようにいろんなキャストにバトンが渡るかもしれないですが、幸四郎さんのライを目撃できたこと、たぶんおばあになってもずっと自慢したくなると思います。