- 新神戸オリエンタル劇場
- 作・演出 成井豊
「死」というのはやはりどうしても切ないもので、そこには否応なくある種の「ドラマ」みたいなものが生まれてきてしまうと思うんです。そして、その一つ一つがたまらなく重い。だから、今回のキャラメルボックスの芝居は、ちょっと「死」を扱いすぎなんじゃないかなぁ、というのが、私の感想。
前半は良かったんです。もう肉体は死んでいるのに魂だけがとどまり続ける。肉体は順調に(?)死んでゆく。そのリミットの切り方もすごいと思うし、なにより、もう死んでいる彼だけに、なんの不幸も訪れないような家庭に、もうすぐ死が訪れることが見える。これはドキドキせざるを得ないでしょう。なのに、なんだか後半はどこに感情の焦点を持っていっていいのかがわかんなくなってしまった。香取が、実家の母親に最後に会うことが出来るのかどうなのか、長塚仁太郎が大事なひとの最期に一緒にいられるかどうなのか、礼二郎と琴江はどうなるのか、それだけでもうこっちの感情はいっぱいいっぱいなのに、ここに芥川は出てくるわ、彼の死は出てくるわ、作家を目指す仁太郎は叱咤されるわ、幸代さんはもう居ないわ(これはなんぼなんでも軽く扱われ過ぎ!)あげく森山翠子の葛藤まで持ってこられるとこちらはもうついていけましぇん!状態。
あたしとしては、もっともっと香取武三自身に焦点を持っていって欲しかったなぁ。死の準備をするということはどういうことなのか、気持ちがそれを受け入れるというのはどういうことなのか。それが伝わってこないとラストのドラマがこっちに響いてこないッス。
キャスト的には、小川さんと南塚さんが格段にうまくなった印象。大舞台は役者を成長させるのね。中村恵子さんさすが。前田綾さんコミカルで間がいい。細見さんはもう一化けを望みたい。坂口さんもうまいねぇ、ほんと。篠田さんもよかったなぁ。大内・岡田のコンビはもっと出来るだろ?もっとテンションあげてってくれ!という感じ。ま、初日開けて三日目なんでこの点はこれから、ってところだと思いますが。