「HAKANA」 R.U.Pプロデュース

えーと、2年ぐらい前でしたか。なぜまたその時に限って長年行っていなかった扉座を見に行こうと思ったのかはもう忘れたんですが、そのなかなかに好評を博した舞台が商業ベースでの再演・・・ってことになりました。

どん底まで堕ちた「人でなし」鈴次郎と、人ならざるものとしてこの世に生まれ、ひとになることを願う女の切ない切ない恋の話。脚本は初演時からあまり変えてはいないように思われるんですが、演出の都合かさらに長くなっていまして・・・すいません正直ちょっとキツかったっす。真ん中らへんをもうちょっとスパーッと切ってみても良かったんじゃないのかなあ。特に前半は長い。

あと、演出的なことで言うなら、これは全部のキャストに共通して言えるんですが、舞台での居方をもうちょっとビジョンをもって演出して欲しかったってことです。なんかバラバラなんだよなあ。絵としてのビジョンはあったかもしれないですが、「動き」としてのビジョンはもってらっしゃったのか甚だ疑問。儚が鈴次郎に披露する踊り、女郎として登場するシーンの見栄、賭場でのみんなの動き、ゾロ政の太刀の振る舞い、そういうのが、ものすご適当(笑)鍛え上げろ!とはゆめゆめ申しませんが、パッと見ごまかしが利くぐらいにはして欲しかったような気が致しますです。
あと、最後の花、たしか初演は吹き上げじゃなかったっけ?その方が豪華な感じがしていいと思うんですが・・・あのパラパラは悲しいし「花になった」の意味がいまいちワカラン。

賽子姫がホリさんの人形になっていて、なかなかこれは綺麗で良かったです。面白いほど感情が伝わってくるのな。「綺麗で残酷」っていうのを体現していて良かったんじゃないでしょうか。井川さんの儚は、初舞台でまあよく頑張りました、という感じでしょうか。かなり体当たり的な部分もあるし、声もよく聞こえていたし、なによりやっぱり可愛いよねえ。ただ後半どんどん芝居のパターンが限られちゃうところが難と言えば難か。谷原さんは男前だわ声は良いわ、いい素材持ってんなあ!と改めて思いましたが所作の甘さが目に付くんだよな〜。刀を振り上げた手がふらふらしてどうするのか。ただ本当に滅多にない美声なので今後に期待はしたいです。
銀之丞さんはやっぱり銀ちゃんで・・・後半の方が真骨頂って感じかな。声に切なさ成分があるとしたら多分銀ちゃんの声はかなり高い数値を出すことでしょう。前半もっとどうしようもない感じでもよかったかも。そうそう、円城寺さん久しぶりにお見かけしたんですが、あの声!懐かしいよーー。思う様いやらしい役で、楽しんでやってらっしゃった感じがしましたです(笑)

でまあいろいろと文句はあるんですが、私はね、これは初演の時もそうだったんですがもうとにかくこの芝居は六角さんに尽きる!と言いたいわけですよ。素晴らしいのよーーー!あの「そこは半だ!半にはれ!わりきれねえハンパものの半だ!」のセリフだけで来た甲斐あったと思ったよ。最後に佇む姿もそれだけで涙さそうしさあ。すごいよねえ。なんかひとりで舞台の世界を支えきったような感さえありますね。

意外なことに、といっては失礼に当たるかもしれませんが、井川遙さんはその後も舞台に対して非常に意欲的でいらっしゃいます。舞台というものを気に入って頂けたのだろうか。だとしたらすごく嬉しい。このHAKANAの時の井川さんに満点をつけることは出来なかったけども、舞台を好きになってその後もやっていこう、と思ってくれる人が増えるのは素直に嬉しい。谷章もですが、たくさんの舞台に出演して、またどこかの舞台でお会いしたいなと思います。