「端敵★天下茶屋」扉座

ふらっと(文字通り)当日券で。

端敵(ハガタキ)というのは、脇の敵役という意味です。真の敵役は大敵と呼ばれるわけですが、この場合は小物の敵です。物語の本筋に関係なく、チョロチョロ出てきては悪さをしてゆく。大敵ではないから、途中であっさり退治されたりします。
我が師・三世市川猿之助(現・猿翁)の十八番に『敵討天下茶屋聚』という歌舞伎作品があって、その中に出てくる元右衛門という人物が端敵の代表です。この作品では端敵・元右衛門がほぼ主役になっていて、深い理由のない場当たり的な悪事を次々に起こしては、物語を掻き回してゆきます。(公式サイトより引用)

この端敵を六角精児が「セコく、小ズルく」演じるわけですが、物語は「悪役商会」を思わせる悪役専門の役者たちが、ヒーローになる夢を叶えるために自主公演を企画するも、どうも正義の味方は据わりが悪い。そこで正義の味方よりも悪役を魅力的に見せる芝居を打とうぜ!と一致団結するが…という筋書き。ここに六角さん演じる「端敵」が絡んでくる、という。

まーこの男が徹頭徹尾どうしようもないダメ男、そう、悪(ワル)じゃないのよ、ダメ男なのよ!それでも成立させるのは六角さんの愛嬌とうまさなんだろうなあ。

しかし「ダメ」だからこそ、あの退場はちょっと、えええっ!となったのも事実。芝居のカタルシスを考えれば、最終的に「興行をあの手この手で成功させまいとする」六角さんと、それをかいくぐって(時には邪魔が怪我の功名となって)舞台を成功させる面々、という構図のほうがなんぼかマシなんじゃないか、なんて思ったり。

劇中劇での悪役5人衆の見せ場はたいそう気持ちよかっただけに、やっぱりこの成功をもって懲らしめられてほしかったよネ、と思わずにはいられませんでした。

しかし岡森さんはああいう役が似合うよね…!人情味ある大ボスやらせて右に出るものいないんじゃないか。久々に見ても六角さんの飄々さと岡森さんの重厚さはほんとにいいパワーバランスだよなーと思いました。