「わたしの星」

  • 三鷹芸術文化センター星のホール 自由席
  • 作・演出 柴幸男

「わが星」の世界観を引き継いで、柴さんが現役の高校生達と作り上げた新作。開演前にロビーに置いてあった稽古場ダイアリーをパラパラと読んでたらすごくおもしろかった。

登場人物の中で「スピカ」だけがはっきりと実際の役者さんの名前から引いていない(「ヒカリ」もそうか)ので、その「星」という構図と高校生達のひと夏、という構図が重なり合う、というのがあったのだと思うけど、思いのほか「高校生達のひと夏」の持つパワーときらめきがすごくて、重心が完全にそちらに寄っていた印象でした。

演劇とは大いなる嘘であって、だからもちろん「高校生」を「実際の高校生」が演じなければいけない必要はどこにもないわけだし、それでもちゃんと成立するのが演劇の面白さだと思うのだけど、いやしかし、この「今、今しかない」というような彼ら彼女らの圧倒的なきらめきはちょっと気圧されるほどであった。

しかし、柴さんは「今まで近くにいたのに、ある日突然離れてしまう」というモチーフをどの芝居でも必ず織り込んできているのではないか。わが星、あゆみ、朝がある。でもって、その「もう会えないかもしれない」という少しの希望も含めた切なさを掬い取る手つきがもう、おそろしいほど巧み。

ココを演じた西田心さん、メグを演じた吉田恵さん、この二人が個人的にものすごく印象に残りました。会話に入っていくタイミング、場の空気をさっと支配する感じ、後半はこの二人が出てくるとちょっとホッとさえするような。ナナホをやった山田奈々緒さんはスピカに対する屈折した心情を吐露する場面でいきなりモードチェンジしたかのように芝居が立って見えて、おお、と思わずのまれました。

おそらくは夏休みの宿題や課題や、花火や夏祭りや、そういったものを吹っ飛ばして、この芝居を作ることにその3年間のうちのひと夏を賭けた「実際の彼女たち」の姿がどこか透けて見えるようで、それは芝居としていいことなのかそうでないのかはわからないけれど、この先、いつかの星のように遠く離れた彼ら彼女らが、この夏のことをどんな風に思い出すのかな、そんなことを考えずにはいられない時間でした。