「散歩する侵略者」イキウメ

  • シアタートラム D列15番
  • 作・演出 前川知大

イキウメの代表作。やっと観ることができましたー!どうせなら芝居で初見にしたいとDVDとかも見ず映画も見ずがんばりました。以下もちろん最後の展開まで書いているのでお気をつけて。

散歩する侵略者、まさにその名の通りの物語で、何かの暗喩かな?とか想像していたのは見事にハズレ!という感じ。「何かが起きている」ことを知っているものと、「何かを起こしている」ものと、「何かが起きているのは知っているけれど知らない(気づかない)ことにしたい」もの、それぞれのやりとりをものすごくうまく書いているなーと。うまく書いているということは、その中の誰かに引っ張られそうになるということでもあるわけで、概念を奪われる、ということがわかってからは見ている私が完全に防御の態勢(つまり侵略者側が一矢報いられる展開を待ってしまう)になっちゃいましたね。

なので、ラストの展開に「あっ…こうきたかー!」と思いました。まさに一発で攻守を逆転させるといってもよい物語の展開だし、収束のさせ方だなと。あれ、最後に奪われた鳴海のほうにまだ真治への愛しさがあるように描かれているのは、男女の愛という概念がなくなっても人間に対する愛みたいなものはまだ奪われずに残っているってことなのかな。うがち過ぎですかね。

驚くのはこの「隣国からミサイル」という状況設定が初演の時から変わってないってことですよね。いやはや、創作の世界では演劇に限らずそういった「図らずも時宜を得てしまう」ということが時々起こりますが、これもまさにそんな感じ。頭上を飛び交う飛行機、ミサイルが通過したという報道、きな臭さは漂うのに一見昨日と同じ顔をした日常が続いている…。前川さんお得意の「すこし不思議」の枠をはみ出した不穏さを感じるのは、今の時代背景の中で見るからってのもあるんだろうなと思いました。