「迷子の時間-語る室2020-」

亀梨くんが出るってことはチケット取るのも難しそうだし時期的にも難しいかもだしうーんうーんと悩んでいるうちに当然のごとくチケット入手のチャンスを逃し、まあしょうがないなーと思っていたら、東京公演中に「大阪公演の見切れ席販売」の案内があって、まあどれぐらい見切れかわかんないけど申し込んでみっか!どうせ当たらない!と思ったらこれが当たってしかも1階の3列目(の端っこ)だった。おいおいここで3列目が出るってことは相当見切れなんじゃないの…舞台の奥半分ぐらい見えないとか…?と戦々恐々としながら劇場に向かったら普通にぜんぜん見切れてなかった。むちゃくちゃいい席で拝見することができて(つーかブリーゼ何度も来てるけどこんな前方に座ったの初めてよ)ありがたさしかない。

本当に自分でもどうかと思うんですけど、始まって10分?20分?ぐらいで「…これ、知ってる話だな?」ってそこで初めて気がついたのマジでひどい。そうだよね!語る室2020だもんね!迷子の時間のタイトルのほうに引っ張られてたね!5年前に見たイキウメの「語る室」も覚えてるところとそうでないところがあるけど、後半につれ「そうそうこういう話だった…」と記憶が甦ってきたような感じだったな。

この「語る室」がお話としてちょっと異質というか、前川さんならではだなと思うところは、居心地のいい大団円をまったく用意しないところ。あの母親は自分が乗せたヒッチハイクの若者が時間を遡行した自分の子どもであると知ることはないし、父親の免許証を手にした彼が元の世界に戻れる保証もない。弟を待ち続けた兄はその弟がすでにこの世におらず、目の前にいる若者がその弟に育てられたことを知らない。物語の冒頭で示された状態から、彼らは何一つわかりやすい解決を手に入れていない。

にもかかわらず、見終わった後にはどこか明るさが残る。初演の時には、特にあの母親の苦しみに引っ張られた記憶が強く残ってるんだけど、今回観てこれは受容の物語なんだなと思った。物事を解決する、あるべき場所に戻すのではなく、受け入れるための物語。

亀梨くん、こんなカッコいい人がこんな田舎の交番にいたらそりゃもう町は大騒ぎになるのではというメタなことを考えなかったといえばうそになりますが、あまり派手さのない役柄を恬淡とした佇まいで演じていてよかった。忍成さんと演技の相性が合っている感じがあったなあ。貫地谷さん、この中ではいちばんウェットな役柄で、芝居もわりと入り込み型なので、イキウメの世界をぐっとリアリティのあるものにしていて際立ってました。浅利くんも相変わらずうまい。前川さんのホンのテイストにすごく合ってますよね彼。

東京公演・大阪公演と無事完走、本当によかった。もうこればっかりは運だなとも思いつつ、しかし運の良さを引き当てるには毎日の積み重ねしかないわけで、演者・スタッフの皆さまになによりおつかれさまでしたと言いたいです。