「蛇よ!」

  • スパイラルホール  B列15番
  • 作・演出  松尾スズキ

松尾スズキ大竹しのぶのタッグ。4本のオムニバスの合間に、映像で「出しっぱなしの女」が挟み込まれる構成。
大竹さんの自由度が素晴らしくて、相変わらずどこにいても何をしても光っている女優さんなのだが、その大竹さんと1on1で向かい合う松尾さんの技量と存在感にも恐れ入った。

以前「業音」を見たときに、あまりにも松尾ワールド原液でお飲み下さいみたいな感じで、劇場出るとき湯当たりならぬ松尾当たりしてしまって「もう少し薄めてくれた方が自分は飲みやすい」とかそんなことも思ったんですが、今回のは良い感じに飲みやすかったな、個人的には。大竹さんの「全然ダメじゃない感じ」(大人計画の役者に漂う「ダメ感」が大竹さんって不思議なほどない)がそうしているのかな、とも思うけど。

薄めとはいえ短い作品のどれもが「生まれちまった哀しみに」というトーンであって、一見究極にバカバカしいんだけどリリカルな美しさもあったりして私は好きな感じだったかな。「これからの人」と「刺したね」が特に好き。「これからの人」は見た目は本当にバカなんだけど、「初めてのSM」「突起物の女」のある意味前フリも効いていてぐっとくる台詞が多かった。

映像も・・・うーん実は、この映像の面白さは自分にはよくわかりませんでした。笑ったけど、自分でも驚いたことに生で芝居を観るよりも、さっき舞台に出ていた人が出ている映像を見る方が直視できない恥ずかしさがある。舞台と映像、見に行くときのスタンスが違うのでどうにもモードチェンジ出来ず。

今回のは軽いジャブ、という感じの小品集であったので、徹底的に大竹さんを描いたらどんな作品が生まれるのか、見てみたくなりました。

「三月大歌舞伎 夜の部」

「盛綱陣屋」
開演十分前に番付買い込んで筋書きだけとりあえず入念にチェック。自慢じゃないが(本当にないが)そうしないととてもストーリーの肝についていけないのです私は。歌舞伎の番付は見所まで書いていてくれるので助かる〜。なるほど、モデルは真田兄弟なのね。自分の中で登場人物をわかりやすく置き換えて観劇。しかし実際、こういう時代物というのはなかなか見るときのスタンスというのが定まりません。でもって子役が出てきただけで瞬間冷凍庫のようにテンションが下がる私であるので、個人的にはあまり好きな演目ではないかなあ・・・と思っていたのですが、首実検のところでの盛綱の無言の芝居がすごい迫力で、なんだか一気に呑まれました。うう、すげえ。この部分だけ色んな役者さんの見てみたい。でもって、富十郎丈のお芝居を拝見したの私初めてだと思うのだが、「人間国宝」云々と仰っているお客さんの話が聞こえてきて「え?こんなに若いのに人間国宝なんてすごい〜」と思ってみたらなんと昭和4年生まれでらっしゃった!!きょうええええええーーーー!である。出演者の中でも一二を争う台詞回しのクリアーさであったが・・・御年75歳とは・・・恐るべし歌舞伎、である。

「保名」
仁左衛門さまの舞踊。ああ、ちょうちょが・・・きれいね・・・にざさまもきれい・・・と思っているうちに終わってしまった。紫の鉢巻きってなんか妙にセクシーだなあ。

「鰯売恋曳網」
ストーリー的には「あ、あ、ありえねえ!」という大団円ながらも、とにかく蛍火と鰯売の二人がかわいくてかわいくてほほえましくてもうそれだけでヨシ!なのである。蛍火の玉さま・・・う、美しい・・・でもってなんという可愛さか!胸がきゅんvってなるよきゅんvって!勘三郎さんの鰯売も素晴らしく愛嬌があって良いのだ!!鰯売を膝枕してあげて「寝言をもう一回言ってくれないかしらん」と言ってるところなんかト・キ・メ・キ・1000%という感じだった。なんつーかもう、キャラ勝ち?笑いどころも多くてなごむ〜〜〜。花道での襲名おめでとうのご挨拶も素敵だし、勘三郎さんが玉さまの着物をなおしながら「お前は本当にいつ見てもきれいだねえ」って言われてにこーーーーっとする玉さまにノック☆アウト。もう☆も飛んじゃいますよってなもんだ。傾城の皆様も左團次さんのお父さんもいい味だしていて素晴らしかった。すっごく楽しい気分で歌舞伎座をあとに出来て、満足満足。