「まとまったお金の唄」大人計画

楽しんだことは楽しんだのだが、なんとなく乗り切れないまま終わってしまったという感じが強く残ってしまいました。めちゃめちゃ笑ったし、好きなシーンも沢山あったんだけど、ひとつの芝居としては印象が散漫なままという感じ。

後半に立て続けに素晴らしいシーンがあって、宮藤さんの拡声器のシーンや「意味が濁るわ」の台詞、お母さんが「何度でも忘れて、何度でもおとうちゃん殺してしまう」というところ、セスナで飛ぶシーンの「前におられるとプレッシャーや、そこがええ、そこからあんじょうナビゲーション頼んまっせ」というとこ、スミレの新幹線での博子との会話もよかった。イマジンの歌にはあまりのベタさに驚きつつも「うわーやべえ(泣きそう)」とか思ったり。

一番好きなシーンは「一番幸福な家」と言われてお母さんが喜ぶところかな。そのために始まった不幸じゃなくて、街中で一番幸福そうな家族に見られていたことに喜ぶお母さんのシーンは良かった。

ストーリーの中で大きな役割を担っているのは馬場でありスミレでありお母さんなんだけど、しかし前半あまりにも舞台をかっさらいすぎていたのは阿部サダヲ演じるヒカルで、もうそれこそ「どんな玉でも返してくる」変幻自在ぶりとそのテンションに惚れ惚れしすぎるあまり、ちょっと舞台の上の物語が私の中で二の次になってしまっていたのかなあと思う。昔からなんですけど、ああいう「誰も俺についてこなくてもいい」的な暴走超特急ぶりを見せてくれる役者に異常に弱くて、個人的に前半はサダヲちゃんしか目に入らなかったんですなあ。

いや、伊勢志摩さんの蝶子もすごく好きだったのだが、この人も後半出番が少なくなるでしょ。で、蝶子とヒカルメインで見ていた私は後半うまく切り替えられず、ってとこだったのかなあと。

大阪弁どうかなーと思いつつ、松尾さんがやるのにそんな中途半端な大阪弁なわけはないとも思っていたんですけど、言葉的にはまったく気になりませんでした。ただ、ひとつ細かいことですが「東京弁を練習する」ところ。「折角東京弁が喋れるのに」という精神は、大阪には無い気がする(笑)

村杉さんて、舞台ではすごく格好いい役をやることが多いと思うんですけど、で実際にちゃんと格好いいのが毎回すごいな!と思う。今回の役もよかった。あの、セスナからお母さんに語りかけるシーンね。オットコマエだよねえ。

客演の菅原永二さん、妙な几帳面さがヘタレ赤軍派なキャラにマッチしていてよかったっす。宮藤さんはああいう時代の空気が普通にしみついているかのような佇まいでした。70年代ファッション似合いすぎ。しかしやはり個人的には阿部サダヲでした。うん。久々にテンション芝居を堪能させてもらったなーと。さすがでしたです。