「ズビズビ。」

短編小説、オムニバス作品大好きの私には夢のような作品でした、ズビズビ。みんな、もっとオムニバスをやればいいのに・・・!

というわけで、今回のMOPは趣向を変えて1本の芝居の中に4つのお話が存在するオムニバス形式です。共通するのは「楽屋裏」というシュチュエーションのみ。それぞれは独立したお話でありますが、1つの世界の中に存在している。4つのお話があるということで、普段メインを張らない役者さんが主役のお話や、MOPご自慢のクリーンナップ*1が脇に回る新鮮さも味わえて、お得な感じ。それにしても、MOPの役者さんの層の厚さがこういう時はよくわかりますね。いろんな味のある役者さんがいるからこそのこのバリエーション。

タイトルの謎も含めて、キレイにまとめたなあ、という感じです。最後の生演奏も含めて、非常に楽しい時間を過ごす事ができますよん。

以下、各話の感想をバレ込みで。観劇予定の方は避けるが吉。

  • 1話目「ずっとあなたが・・・」

メインは小市さん&ドリさん。かつては大スターだった映画俳優と、その取材に来る地方紙の女性記者の話。短編はなによりも「オチが命」といっても過言ではないわけですが、もっともきれいにまとめているなと思ったのはこの1本目。劇中で揶揄されたクローディアスの演技を一人繰り返すところに無言の意味を重ねてみせるところがうまい。中身はかなりヘヴィーです。この女性の心情を「まったく理解できん」というひともいるだろうとは思いますが、私はちょっと自分に置き換えて・・・強ち有り得ない話でもないのかなと思ってはみた。小市さんが非常に鼻持ちならない元スターを、ドリさんが女性記者を演じていて、かなりガチなふたりの演技バトルが見応えあります。小市さんももちろんテクニカルにうまいのだが、一瞬で会場をさらうドリさんの感情の豊かさはいつもながら惚れ惚れ。

  • 2話目「ビッグな男」

メインは酒井さん&木下さん、林さんかな?ドサ回りの旅公演を続ける一座が、主役が逃亡して窮地に追い込まれる、というシュチュエーション。酒井さんの座長がずっぱまり!それを支えるいかにもおかみさん、な林さんも良い。話としてはこれはちょっとオチが弱いのかなあ、という気はしましたが、短い話ながらもキャラが立っているので面白く見られます。永滝さんの役とか台詞ほんと少ないけど超笑いました。あと三上さんが非常に美味しいところをさらっていかれます。似合う、似合いすぎる(笑)

  • 3話目「ずいぶんな話」

メインは勝平さん&岡村さん。個人的に大変楽しませてもらった話です。舞台監督助手をつとめる勝平さんと、偶然再会したかつての思い人の再会が軸。MOPには珍しく「等身大の女性」がメインになっているところもよかった(MOPで女性がメインになる場合は当然ドリさんがその役に当たるわけだが、なかなか等身大の女性というのはドリさんには回ってこない・笑)。なかなか仕事で思うようにいかない、そこに現れたプリンスのごときかつての第2ボタンの相手。揺れるよ、普通に。「こうなるだろうなあ」という風に話は進んでしまうわけだが、あれはあれでスッキリするし、最後に「仕事に立ち向かう自分」がちゃんともう1回浮かびあがってくるところも私としては非常に好みだなあと思った展開でありました。勝平さん見事な好演!

  • 第4話「ビタースウィーツ」

最後の最後に「ザ・MOP」という話をもってくるあたり、客のニーズをわかってますね!という感じです。メインはもちろん三上&小市&ドリさん。戦後間もない頃のジャズバンドのお話で、三上さんと小市さんは「同じ孤児院で育って同じ釜の飯を食って同じ音楽を聴いて同じ女を好きになった」仲で、その女がもちろんドリさん(歌姫)なわけですな。ああ、これぞ私の望む理想のトライアングル・・・!みたいなシュチュエーションにそれだけでもううっとり。ジャズマンたちのお話なので、衣装もビシッと決まってかっこいいったら!小市さんはちょっとクールなバンマスなんですけども、もう本当にどうしようか!?というぐらい全部がツボでした。本気で熱が出そうだった・・・恋って不思議・・・(言ってろ)。あの賭のシーンのあと、笑いながら「いかさまは御法度だぜえ」と言ってケンちゃんの座布団の下をめくるときの口調とか仕草とかほんと細かい話で申し訳ないんですけど「萌えつきた」って感じでしたハイ。萌えて尽きたよもう。
三上さんはお得意の「チョイ悪」風味で、でも人情に厚い感じがぴったりだし、ドリさんはめっちゃめちゃかわいいし、話的にはヘヴィーで、最後は本当に切ないんですけども、いやーええもん見た!という気にさせてくれる1本でした。ラストの重さは、そのあとのバンド演奏が吹き飛ばしてくれる感じ。私はといえば、サックスの三上さんとその隣でペットを吹く小市さんしか視界に入っておりません、本当にありがとうございました。

初日のカーテンコール、ドリさんが小市さんに話させようとしたんだけど、三上さんが「喋る?」って聞いたら笑顔のまんま「喋れない」と言った小市さんがカワユスでした。結局三上さんがご挨拶してくださいました(笑)

今回、大阪は初日のみ、東京は初日と平日昼、あと土曜ソワレに「ポストカードを御来場者全員にサービス」ってのがあって、本当は土曜日に見ようと思ってたんですけどまんまとつられて金曜日のチケットを取ったわかりやすい私です。三上艦長のがすっげかわいいんだよ!小市さんのは渋いの。いいなー、こういうサービスいい。平日客寄せ運動にすっごい効果的だなこれは!と思った一品でありました。

*1:キムラ・三上・小市の3人。マキノさん談