「大パルコ人3 ステキロックオペラ サンバイザー兄弟」

パルコ×宮藤さんのロックオペラシリーズも第3弾。今回は音楽に怒髪天の上原子さん、主演に同じく怒髪天の増子さんを迎えるという、変化球!?それともロックオペラ的にはこっちが王道!?な新作。

宮藤さんのロックオペラ初登場の瑛太くんと、舞台初挑戦の増子さんが主人公、時代遅れのヤクザ兄弟。2033年にはもはやヤクザやヤンキーは絶滅危惧種。兄弟杯を交わした二人だが、合わせて前科18犯、いつもどちらか塀の中で一緒に過ごしたのはたったの8日。ある日、17年の刑期を終えて出所してきた兄貴がこう宣言する。「おれは、バンドを組んで紅白に出る!」

物語の中心にいるのは増子さん演じる「赤サンバイザー」の兄貴なんだけど、ほかの人物にとって兄貴がどういう存在か、というのを徹頭徹尾周りに語らせる構成になっているのは、増子さんシフトだよなーという感じがしました。増子さんが自分で語るより(もしくは、芝居で見せるより)周りの語る「兄貴」で兄貴を知るという。

そしてその兄貴はといえば、やはり歌で圧倒するという展開でしたね。いや、役者としての舞台の場数でいけば、例えば三宅さんや皆川さんと増子さんではかなりの違いがあるわけですが、しかしこと「歌」の説得力、巧拙というだけではない、その歌で何かを動かしてきた場数で行けば、増子さんと他のメンバーには歴然とした差がある。そういう、歌唱一発で世界をごっそり変えていくような場面がいくつもあったのは、さすがとしかいいようがないですね。

あと、個人的には皆川さんのタフネスぶりに舌を巻きました。いや、今まで何度も拝見してきて、何度もそのタフネスぶりを目の当たりにしているはずなんだけど、全部の場面でやるべきことをやる以上にやっていてほんとすごいわ…と改めて。ほんとにアレサ・フランクリンに見えたよ!

瑛太くんと清野菜名ちゃんのすがすがしいバカップル(本当の意味で)もよかったなー。瑛太くん、今までに彼が出演した芝居の傾向とはかなり違う作品でしたが、あの淡々とした佇まいでひょうひょうとバカをやっていくのがおかしかったです。とはいえ、隠し切れない知性の片鱗…とも思いましたけども(笑)清野さん、いやーあのアクションお見事でしたね。思わず客席どよめいたものね。これ次の新感線ががぜん楽しみになってきましたわね。

観劇時の脱帽がマナーとして定着しつつある中、観客にサンバイザーを初手からかぶらせる(かぶれとは言われてないけど、かぶるなとも言われない)というのがすげえチャレンジングだな!と妙なところで感心しました(笑)