「SEVEN 15minutes stories」という副題つき。今をときめく7人の作家に、それぞれ15分の短編を書き下ろしで書いてもらうという贅沢な試み。普通の2時間芝居を長編とするなら、これは短編、オムニバス小説集です。
それにしてもまあ、揃いも揃えたり、な作家陣だよなあ。
各作家の舞台を一度でも見たことがあるひとなら、多分容易に「これは誰の作品」と当てられる気がします。当てる楽しみも含めて見たい、という方のために式次第は色変え。
「仮装敵国」式次第
一、開場
二、暗転
三、長塚圭史作品
四、倉持裕作品
五、井手茂太作品
六、土田英生作品
七、千葉雅子作品
八、故林広志作品
九、井手茂太・佐藤史郎作品
十、後藤ひろひと作品
十一、ケラリーノ・サンドロヴィッチ作品
十二、暗転
十三、ご挨拶
十四、暗転
十五、閉会
ちなみにこの式次第は当日チラシの中に挟み込まれているので、誰がどの作品か見たくない人は要注意。
短編なのであまり内容について書きすぎると楽しみを削いでしまうことになるかも、ということで全体的な感想に終始しちゃうかもしれませんが、何より「15分の短編とはいえ(いや短編だからこそ?)作家のカラーははっきり出る」ということが如実で、それはとても面白かったです。「敵」という共通のテーマを投げて作品を書いてもらったようなのだけど、その舞台の切り取り方にもそれぞれカラーが出てます。個人的に、長塚作品と千葉作品は出だしでわかりました(笑)
例えば「え?」とか「何?」とか「なんで」とか、そういう台詞とは言えない合いの手みたいな言葉が、実はその作家の全体のトーンを支えてるっていうのもなんだか発見でした。ケラ作品と後藤作品はそのトーンの違いで「っぽさ」が別れていた気がします。倉持さんのは、途中から「これは倉持さんに違いない」と確信。故林作品と土田作品が実はちょっと迷ったんですけど、この台詞を言う水沼さんなり金替さんなりを想像するとこっちかな?という感じ。
個人的に一番面白かったのは倉持作品、15分という芝居の中で着地点が一番キレイに決まった、って感じ。故林さんの作品もうまいなあ、と思ったな。ケラさんや土田さんの作品は設定自体はどうということはないのに会話でうまく笑わせるなあと。(しかしケラさんの作品はちょっとラジオの時間を思い出してしまった。)千葉さんてあまりこういう短い作品とか書き慣れていない気もするけど(あ、でも電源コントとかうまいよな)、なかなかにシュールでちょっと意外でもあった。長塚さんの作品はなあ、ちょっとタイミングが悪かったような気もしないでもない。気にしすぎかな。途中で出ていったひとがいたので余計気になっただけかもしれないが。笑った具合でいくと後藤さんの作品が一番笑った気もするのだが、最後がなー。これはもうちょっと長くてもいいかも、という感じもしました。
もうひとつのお楽しみは、作家と役者の意外な相性。後藤作品の福田転球、ケラ作品の八十田勇一、故林作品の春風亭昇太に久ヶ沢徹といったところはなんだか意外にもイイ!!という感じであって、これをきっかけにそれぞれの本拠地でお呼ばれ、なんてことになったら面白いなあと思ったり。辺見えみりちゃんは長塚作品での姿が印象的。松尾貴史さんは、今回得意技すべてを封じて「まともな突っ込み」に終始している姿がある意味貴重かも。あと、井手ダンスを踊っているときの福田転球さんのイキイキぶりが際だっていてよかったです。転球さん、ケラ作品でも土田作品でも光ってたし、実力あるひとだよなあと改めて感心。