「背中から40分」渡辺源四郎商店

ねたばれ注意報。ちなみに注書きは、昔の松尾ドラマのねたばれが多量に!

勢いで見に行ってきた。初アゴラ。迷ったあげく劇場に電話したバカ。どうもすいません。

今年の1月だっけかな、いるかhotelでやるのを見てみたいなあと思っていたのだがちょうど遠征中でかなわず、今回土曜日のソワレがぽっかり空いたので、こりゃ渡りに船だなと。

ストーリー自体はそれほど目新しさを感じるものではない。横柄な態度のワケあり風な男が深夜ホテルにやってくる。彼はどうやら女を待っているらしい。ホテルの従業員にねじ込んで無理やりマッサージを呼んでもらう。そうしている間に、それぞれの抱えた深い事情が浮かび上がってきて・・・という筋書き。

見ながら、これ松尾スズキさんがWOWOWでドラマ作ったときの話をちょっと思い出した。*1去年の暮れに見た「海賊」もちょっと思い出したかな。うん、だから、たとえば男が本当は何を意図してそこにいるのか、といったようなことは割と読める展開ではあるし、そしてそういう展開で男の意図が果たされるというオチにはならないだろうというのも読めるわけです。問題は、じゃあどうやって着地させるか、ということなわけで。

それがこの芝居の場合は「心残り、あります、僕」に続く台詞なんだろうと思うんです。この1行。この1行を書けるひとが、作家(劇作家)といわれる人になれるのだろうし、どんな1行を書くか、がその作家のカラーを決めるんだろうなあと思う。
畑澤さんの書いた1行は、本当にやさしい1行でした。

久しぶりに小さな劇場での鑑賞。おーちーつーくー。芝居を見ている間「他の客がいる」ということを認識しなくてもいいこの「客は客として埋没する」感じ、たまんない。

何気にセットがすごくいい。そして、ほとんど変化のない照明がたった一箇所だけ変わる、あの不安感。心地よい緊張感でした。

*1:結構前にWOWOWで「松尾スズキ特集」みたいなのをやっていて、そこで松尾さんにドラマを撮ってもらう、というのがあった。奥菜恵ちゃんが出ていて、松尾さんは旅の途中でその町に寄った中年男で、食堂で見かけた奥菜ちゃんに異様に執着し、彼女とどうにかキスしようとするのだが、結局果たせなず、逆に殴られて伸びてしまう。ところが、実は彼は自殺するためにこの街にやってきたことが彼が吹き込んでいたテープでわかる。そのテープには「今日中にあの女の子とキスできたら、死ななくてもいい」と吹きこまれていた。翌朝彼が目を覚ますとビデオテープがあり、そこには女の子とその友達(男含む)がノビて寝こけている中年男に、ひとりひとりキスしている画像が映し出される。時計の針は12時前。「これでもう死ななくてもいいよ」という女の子の台詞で、ドラマは終わる。見たとき、ぼんろぼろに泣いた。ビデオを撮ってなかったのが惜しまれる。