「あかいくらやみ〜天狗党幻譚〜」

ベースになっているという山田風太郎の小説は未読、天狗党についてもうすぼんやりしたイメージしかないような状態、かつ最近のプロデュース公演でありがちなんですが、舞台が始まってから「あ、この人も出てたのか」と気がつくパターンという。小日向さんが出るっていうのはもちろん把握してたんですけど(当たり前ダヨ)。

ひとりの死に損なった男が見ている夢の中に、もうひとりの死に損なった男が迷い込み、その意識の中をさまよい歩く。若い男女と作家と編集者が訪れた旅館はまるで男の意識の中そのもののようで、彼の記憶にあるかつての同志たちが、入れ替わり立ち替わり現れるが、彼らは皆その後の自分たちの末路を知っている。どこに辿り着くのかわかっている旅を、死に損なった男は何度も自分の意識の中で繰り返す。

時間が時間通りではないし時空が時空の通りではないとわかってみていても、言葉でいうほどにはすっきりと捉えられない舞台になっていて、うーん、まあ嫌いではないしむしろこういう手法は好きなほうだと思うんだけど、もうちょっとこの「くらやみの世界」に観客をぐっと引きこんでくれる要素が欲しかったなあ、とは思いました。

最初に書いたようにキャストを漠然としか把握していなかったので、小日向さんはもとよりあちこちでええ声爆弾が炸裂していて、ぎゃー小松さん!まことさん!大鷹さん!小野さん!と心中大騒ぎでなんかお得な感じありました(笑)そしてその中でもやはり長塚芝居において格段に光る伊達さんとなきゃやまさんの心強さよ…!伊達さんちょういい役だったね…!小栗くんの求心力もふくめてキャストはほんと粒揃いでしたね。そして老いさらばえた姿から青年時代の初々しい姿まで見せて下さった小日向さんに萌え萌えしました。あーかわいい。

ちなみにコクーンシートで見たので、下手はがっつり見切れた形でしたが、まあコクーンシートだしな!と思うと割と広い心で見られますねやっぱり…(笑)あと円形にしたり袖と繋げた通常の形にしてみたりと、シンプルで機動的な装置も2階から堪能できてよかったです。