「獣の柱 まとめ*図書館的人生(下)」

  • シアタートラム C列15番
  • 作・演出 前川知大

「図書館的人生(下)」となっていますが「(上)」を見ていなくてもぜんぜん大丈夫です。今からおよそ100年後の未来、この地球に訪れる幸福で壮絶な黙示録。公演中ですので以下畳みます。


覆い隠されている向こうにあるものはいったいなんなのか、冒頭から100年前に遡ってそもそものコトの発端をたどっていく。一見取っつきにくく、荒唐無稽とも思える展開がきわめてスムーズに、飲み込みやすく観客に伝えられる。それを目にしただけで「幸福なあまり」動くことができなくなってしまう。そして幸福な余り最後には死に至る。「それ」はいったい何を伝えようとしているのか?誰が?どこから?なんのために?そもそも「伝えよう」という意思はそこにあるのか?

実際にそういう体験をしているわけでもないのに「見ただけで幸福なあまり動けなくなってしまう」感覚に共振できるのがすごいですよね。見ちゃいけない、でも見たい。聖書の黙示録は劇中でも出てくるけれど、「獣の柱」というタイトルもロトの妻を思い出させる。アポカリプスの言葉通り山田は最後に覆いをはずすし、それは彼が柱の大使からあの時啓示を与えられていたからのようにも見える。

というような、聖書をメタファーにしたような物語の展開と、それぞれ「個人」の物語として見た展開がぐっと沿うところと、そうでないところがあったような感じがありましたね。「見える者」の選択がどう出るかをもっとじっくり見たかった気も。しかし、こうした「大いなる虚構」(という言い方は語弊があるかもですが、あえて)を語ってくれる作家はあまりお見かけしない気がしますし、この「ここではないどこか」の物語の手触りは嫌いじゃないどころかむしろ大好物ですデヘヘヘと思いました。

しかしあれだね、前川さんは、成志さんに愛妻家の役をやらせるのがお好きなのかしら。成志さんに、愛妻家のイメージをお持ちなのかしら。ラッパ屋に選ばれたのは彼1人ではなかったのではと私は勝手に想像するのだけど、彼はある意味してはならない「契約」をしてしまう人物で、でもそれが愛する妻のためってのがもう成志せんぱいにどんだけロマンチシズム背負わせるんや…!とありがたさで震える思いでした。素敵な成志をありがとう!(絶叫)しかもあれ。あの展開。人間の強さと弱さがツートンカラーの縞模様の波のごとく押し寄せる。堪能したわあ…!

山田役の安井さんと二階堂役の浜田さんのコンビもよかったなー。どこかのんきなところのある2人がのんきでいられなくなるところ。なんとかしなきゃと思うけど、でも実際何をどうしたら?って二の足を踏んでしまうところ。「あれ」がやってきてからの山田のまるで贖罪でもあるかのような戦いぶり。安井さんはいつもあのセルフレームのメガネをかけていらっしゃるけど、メガネをくっとあげるときの仕草がとてもステキで毎回小さくツボってます。うきき。

秋に新作を、東京は青山円形で!ということで、うわーん円形とか素敵すぎるやん!見たい見たい!と気になっております。あっ、カタルシツも見たい見たい!