「メアリー・ステュアート」

  • パルコ劇場 D列13番
  • 作 ダーチャ・マライーニ 演出 マックス・ウェブスター

中谷美紀&神野三鈴さんの組み合わせということで、これは見てみたいなと。しかし神野さん最近ほんと引っ張りだこだ。出る舞台出る舞台、すべてにおいて爪痕を残してらっしゃるからなあ。

中谷さんがメアリ・ステュアートを、神野さんが"バージン・クイーン"エリザベスを演じていますが、お互いがそれぞれの侍女、乳母としても舞台に立つので、二人の役割は目まぐるしく変わっていきます。演じる一方の役はいずれも女王、もう一方はそれに従う者なので、その両極端なふたりをめまぐるしく行き来するという。こういうの、あの七色の声を持つ神野さんはぜったいすごいだろうな、と思っていて、まさにその期待通りだったんだけど、中谷さんも負けず劣らずよかった。姿勢と声のトーンだけでその波を作っていかなきゃいけないので、これは手数の少ない役者さんがやったらかなりしんどいことになるだろうな…と思いながら見ました。

とはいえ、あの突然のラップ攻撃にはあまりのことに感情の対処ができず、「頼む!ゆるしてくれ!いたたまれなさで気を失う!」とマジで思いましたが気を失う前に収束した(そして夢のシーンだったとわかった)のでなんとか事なきを得ました…あれなんなんでしょうね、役者がどうということではなく、ああいうもののいたたまれなさってどこからくるんだろう?

エリザベスが、結婚したことを報告する侍女にむかって、結婚なんてするぐらいなら1000回しんだほうがマシ、みたいな啖呵をきるところ、神野さんの声色もあいまってすんげえド迫力でした。

史実では実際に相見えたことがない、という同時代に生きたふたりの女王の「if」を描くという点では面白かったですし、最後までメアリの処刑執行のサインをためらったというエリザベスの「なぜ」を埋めてみせるのも好きな視点ですが、個人的にはもっと言葉で、台詞でおしまくる舞台を期待していたというところはあったかな。

シンプルなのにゴージャス、なワダエミさんの衣装すんばらしかったですね。王者の衣装にも、従者の衣装にも見えて無理がない、というのがすごい。さすがでした。