「電車は血で走る」劇団鹿殺し

  • シアターブリーゼ Q列15番
  • 作 丸尾丸一郎 演出 菜月チョビ

鹿殺し初見!もちろん名前はずいぶん前から承知しておりましたが、なかなか最初の一歩を踏み出すきっかけがなくここまで引っ張ってしまいました。今回、劇団の代表作を2本一挙同時上演!ということで、ここをきっかけにするっきゃない!と昼夜2本連続で観てきましたよー

「電車は血で走る」は2008年初演で、実家の工務店を手伝う傍ら、好きな演劇も諦められない「宝塚奇人歌劇団」の面々。当主の急逝でとうとう工務店を継ぐことになり、ここで演劇からもきっぱりすっぱり足を洗う!ということになるはずが…という物語。

大きな設定となる部分にノンフィクションの要素が混ざっているだけあって、時折「聞く人が聞いたらそのまま矢が深々と刺さって失血死に至る」みたいなえぐる台詞があって、ぴゃーーと思いながら見ておりました。「パクリの作家とロックが好きな演出家がなんかやりたいってここまできちゃった」とかさ!実際、劇中劇でまんま蒲田(行進曲)と熱海(殺人事件)を引っ張っているあたり、私も作者・演出家とほぼ同年代ですので、あの頃の関西で何を見て、何に憧れてたかみたいなものが透けて見えるようなところもあり、こ、この気持ち…もしや!みぞみぞするってやつか!?とか思ったり。

構成としても演出としても、幕が開いてからしばらくごちゃごちゃしているというか、落ち着いて見られない、軸足をどこにおいていいのかわからずスタンスを決めかねる、みたいな感じで、これで最後まで引っ張られたらけっこうつらいなと思ったりもしたんですが、中盤以降そういった部分を超えて、ぐんぐん前に出てくるものがある。あの少女をめぐる展開自体は早い段階で想像できるんだけど、あの世界における「電車」は「運命」を表すものであり、そこで一気に世界観がぐっと大きくなる感じ。そこに自らの運命をなぞらえる作家の心情、とくに「これからというときにみんないなくなってしまう、でもそれは未来を描けなかった自分に力がないからだ…」という部分は、まさにこの作品を代表作たらしめている部分で、血を流しながら書いた、だからこそ届く台詞だと思わされました。

少女をめぐる運命についても、彼女がのぞんだことがたったひとつ、自分とつきあって「得した」と言わせたい、自分と出会ってよかったって聞きたいという部分に集約されていくところが、なんともいえず切なくて胸を打たれました。幕切れの暗転も美しい。

オクイシュージさんが客演されており、さすがの存在感。ダンスうまい…キレがある!丸尾さんの作家の役もとてもよかった、というか、あれは丸尾さんだからこそ演じられる役でもありますよね。

ところで、シアターブリーゼの1階後方席はめちゃくちゃ見やすいですね。以前前方に座った時はそこまで思わなかったけど、後方列センターブロックは段差もちょうどよく床面もきれいに見えてノンストレスでした。思わぬ発見!