「コクーン歌舞伎 桜姫」

先月の長塚版に引き続き「桜姫」、今回は本家歌舞伎版。面白かったです。面白かったのですが、あえてしなくてもいい比較をするなら、自分は長塚さんの桜姫のほうが好きかもしれないと思った。もしかしたら座席の関係もあるかもだけど。最前列とはいえ舞台サイドの後方だったので、ちょっとストレスを感じてしまう部分もありました。

とはいえ、桜姫をめぐる因縁、清玄をめぐる因縁、清玄と権助がもとはおなじひとりの人間であるという業を、トリッキーな仕掛けも含みつつ一気に終盤でみせるあたりは見ごたえがありました。今回、清玄と権助はそれぞれ勘三郎さんと橋之助さんが役を分けて演じておられて、ゆえに清玄と権助の因縁、というあたりでは見えにくい部分もあったかと思いますが、終盤の演出は個人的にはツボでしたね。もう1箇所ぐらい、そういう混乱を見せるところがあってもよかったのかなと思ったり。

ここからちょっと隠します。
それにしても、最後桜姫が子供を殺さない展開にしたのはなぜなんでしょうか。個人的にはそこはちょっと納得いかなかった。って、あれ、殺してないよね?パンフレットを買っていないので、もしかしたらそのあたりにも触れられているかもとは思うのですが、舞台を見た限りではそこを変えなければならなかった意思、みたいなものは感じられませんでした。桜姫が権助を殺すのは単なる敵討ちではなくて吉田家の姫としての出自を取り戻す、という意味合いもあると思うので、だとするとあの子供を手にかけるというのも必要な場面なんじゃないかと思うんですけれども。

桜姫の七之助くん、ますます磨きがかかって美しく、この桜姫のふわふわと地に足つかない感じもあってよかったです。風鈴お姫としてのはすっぱな物言いと姫様言葉のちゃんぽんぶりも堂に入ったもののように感じました。勘三郎さんは先月は権助(ゴンザレス)、今月は清玄。真逆な二役ですが、どちらにも説得力があるところがさすがだなあと。