「七月大歌舞伎」

  • 「夏祭浪花鑑」

串田演出でない「夏祭」を観るのはこれが2回目。ううーーん!ちょっときびしかった。私が串田演出に慣れすぎているという部分を差っ引いたとしても、以前吉右衛門さんの団七を観たときにはここまでの違和感は持たなかったわけで、なんだろうなあ。言葉かな、とも思ったんだけど、それだけでなくなんつーか・・・人間が薄い、という感じ。海老蔵さんも徳兵衛の獅童さんも若いので、この物語の持つやくざものの斬った張った、今風に言うならクローズゼロ的な(笑)空気はあって、そこはなるほどと思ったんですが・・・。勘太郎くんのお辰は健闘!という感じですが(松本で見たときより今回の方がよかったと思う)、それよりも周りを固めた春猿さんや猿弥さんの手堅さ、うまさが心に残りました。

初見。海老蔵さんは断然こちらのお役のほうが好印象!何度も再演を重ねてらして、役を自分のものにされているということもあるのでしょうが、富姫が思わず恋に落ちる、その涼やかな立居振舞い、凛々しさを説得力をもって舞台の上に立てるというのはやはりすごい。
いやーでも初めて見たので、後半部分の図書之助と富姫の恋、あたりはなんとなく展開を知ってはいたものの、前半の亀姫と富姫のやりとりとか全然知らなかった。つーかあの萌え萌えっぷりはなんだ!こ、これが女子萌えか・・・!と思わず気分はクワトロ・バジーナである。「わざわざ手鞠をしにやってくるなんて」「そんな私をかわいいとお思いのくせに(はあと)」とか!いやー泉鏡花おそるべしである。見目麗しい女子がきゃっきゃきゃっきゃと戯れながら、男の生首を前にうっとり微笑んでいる図とかってある意味男子のヲタク心をくすぐってやまぬと思うのだがどうか。つか、女子の心をもくすぐるよねこれは・・・しかもそれをやっているのが玉三郎さんと勘太郎くんっていう、個人的に目の正月です、本当にありがとうございました。つつきあってくすくすわらう二人の艶やかなことったら!玉さまが亀姫のすそをちょっと直してあげる仕草とかまで萌え萌えでした。はー。
後半は図書之助を前に眷属としてのプライドと恋に落ちた女の情をぞんぶんに魅せる玉さまの気高さ美しさにノックアウト。人外魔境とかよく言いますけど、玉さまの美しさってちょっと人外魔境レベルだよねと改めて思った次第。