- 森ノ宮ピロティホール W列48番
- 作・演出 蓬莱竜太
藤原竜也と鈴木亮平が小学生を演じる!っていう惹句が話題となりましたが、それ自体は演劇の世界ではさほど珍しいことではないと思うんですけど、たとえば三谷さんが同様に「大人が小学生を演じる」世界を描いた「子供の事情」では、あくまでも「子どもたちの世界」における彼らのふるまいを大人化していたのに対して、蓬莱さんの今作では「大人の世界」でもがく子どもたちを描いているという感じ。もちろん、わざと子供らしい芝居をさせるとか、そういう安っぽさとは無縁なんですけど、逆にだからこそ相当えぐられる場面がある。
佐山鉄志と田口圭一郎、ふたりの関係性は一幕終盤でかなり深刻な「いじめ」の世界に発展しますし、鉄志の家庭環境の問題点は描かれるにせよ、そこに至るまでの「邪知暴虐」ぶりもなかなかのものなので、そこはかなり観ていてキツいものがありました。で、これは二幕でどういう展開にもっていくのかな…と思いながら見ていたんですけど、その着地点がまあ、さすが蓬莱さんというか、一筋縄ではいかないなというか、これはある意味かの名作映画「スタンド・バイ・ミー」でもあるなと思ったわけです。しかし、一幕のえぐみがかなりきついので、それがあのラストをスパッと飲み込ませるのにちょっと邪魔しているきらいもなきにしもあらずでした。
とはいえ、あの「俺がお前の弱さを握っていてやる」という台詞は、もうこの一言が書けたらそれだけで脚本としてオッケーだよね、とでもいうべき強烈なパンチラインなので、さすが蓬莱さんといったところだ。あのセリフはすごい。おれがおまえを見ていてやる、というのは呪いのようでもあるけど、あの場にあっては救い以外のなにものでもないのだ。あの場面を見られたというだけでも見に来た甲斐のある一本だった。
竜也くん、前半の傍若無人ぶりもすごいが(楽しそうに見えるのがまたえぐい)、なによりすごいのが後半のなりふりかまわなくなってからの慟哭と、あのラストのやりとりだ。こんなくだらないものにこんなもの描くな、とあのノートを突きつける鉄志、よかった。このひとのエモーショナルさは得難い。大きな声を出せば、感情的になれば、だれでもがあんなふうにエモーショナルな芝居ができるわけではないんですよね。鈴木亮平さんのどこか「闇」を見てしまう抑えめの芝居といいバランスで、ふたりのやりとりは全編見ごたえがありました。