「通し狂言 霊験亀山鉾」

初めて拝見します!ついでに言うと初めての国立劇場!ワーイ!ひろーい!こう、劇場の売店のなんというか昭和感!きらいじゃない!国立劇場のマスコット(ゆるキャラ?)であるくろごちゃんグッズを買おうかどうしようか散々逡巡しましたがやめました…そしてワンピースからの間髪入れずのハシゴだったので空腹でしぬ!と思い売店カツサンドを買いました。とっても美味しかったです。

仁左衛門さまが極悪非道の藤田水右衛門と、これまた悪役の八郎兵衛を二役でおやりになるということで、これは…見とかなあかんやつや!と折角の機会ですし良いお席で拝見して参りました。いやはやもう、なんつーか、最終的にすべての「男前」という単語は仁左衛門さまに行きつくのでは…?と思うほどに、どれだけ悪かろうが、いや悪ければ悪いほど輝く仁左衛門さまにほわ〜〜〜と見とれるわたし、という感じでした。劇中の台詞で何度も「鼻筋の通った男前…」みたいなことを言われるんですが、そのたびに観客が心の中で「うんうんそうそう…」と頷いているのが見えるような気すらしましたね。

石井兵介との果し合いでだまし討ちにしようとするときの、眉をきゅっとあげる表情ひとつで観客からジワが来るってすごいですよね。個人的に一番ずぎゅーん!と来たのはおつまに袖にされた八郎兵衛が戸の向こうから「…覚えてろよ」っていうところ!あのぐっと抑えた声の調子…最高すぎないか…こんときもなんか客席からジワっつーか半分ため息みたいなものがもう漏れてたよね。漏れまくってたよね。

仇討ちものなのに、仇のほうが話の中心になってるのが面白いし、仇のほうにも一分の理が…みたいなことは一切なく最後は気持ちよく討たれていくのもよかったです。通し狂言は全体の流れを見られるので、こうした因果を描く物語だとやっぱりすとんと胸に落ちやすいですね。

いやーそれにしても、仁左衛門さまと同時代に生きてその芝居が見られる幸せを日々かみしめる今日この頃ですな。なんかもう、これぞまさに「尊い…」と心中手を合わせるような気分でした!

「スーパー歌舞伎II ワンピース」

初演が大評判となり、早くも再演!となったのですが、ご存知の通り猿之助さんの負傷により、もともと「麦わらの挑戦」枠としてルフィをやることになっていた右近さんが本役になるという形で公演を続行しています。ちなみに「挑戦」枠とは設定価格に差があったんですが、ご丁寧にその差額分を払い戻しの対象とするという対応。

私が拝見したのは猿之助さん降板して4日後でしょうか、右近さんもまったく危なげのない堂々としたルフィぶりでしたし、初演のときの記憶も薄れつつあってなんだか新鮮に観られた感じでした。というか、けっこう変わってますよね?そうでもない?

しかし、同じ役でありながら、役者が変わるとこうも変わるか、という部分があるのが演劇の醍醐味だよなーと改めて思いました。今回、はからずもこうした展開になったわけですが、この「ワンピース」の舞台におけるルフィは、確かにめちゃくちゃ強いけど、その強さを如何なく発揮するという場面よりも、なぜだかみんなが「彼を助けたくなってしまう」存在として描かれる場面が多い。それが、猿之助さんのルフィとして見るときと、右近さんのルフィとして見るときでは、台詞の聞こえ方が違ってくるんですよね。もちろん、今回こうした突然の事態になってという事情を観客が踏まえて見ているというのもありましょうが、逆に言うとそういうサブテキストを観客が自由に見ることが許されているというのが演劇の面白さではないかとも思うんです。多分誰もが右近さんの奮闘を見守っているし、それを助けたいと思っているし、そういう心が舞台の上にも空気として伝わっていて、なんともいえない「麦わらの一味」としての存在感を醸し出していたように思われます。

今回、奮発して花横のお席を取りまして、それというのも初演を松竹座で2階席から見たときに、次に見るときは花横にして、あの巳之助さんボン・クレーの引っ込みを観たいものじゃ!と思ったのをうっすら覚えていたからなんですが、いやはや堪能しましたよー!ほんと巳之助さんのあの再現力の高さとそれを裏打ちする身体能力すごすぎる。あの引っ込みの前の立ち回りで指でクイクイッと煽るとこマジで「ごちそうさまでーーーーす!!!」と心の中で叫ぶほどに大御馳走だった…あれを思い出すだけで白飯食えるレベル…。花横だったので二幕のファーファ―タイムでは浅野さんにハイタッチまでしていただき、思い残すことなし!

盛り上がる二幕、ドラマの三幕、という感じの構成だけれど、三幕はやっぱり猿弥さんや右團次さんがぐっと芝居で見せてくれていて、その重量感がすごく効果的でした。でもって、あの最後のシャンクス…これ…絶対猿之助さん千穐楽とか出たがるやつじゃん…と思いましたね。しかも台詞が台詞だから、あそこで猿之助さんがシャンクスやったらまたもサブテキスト大発生でドラマ以上のドラマになりそう(と猿之助さんが思ってそうだよ!くれぐれもご無理なさらず〜て私がここで言ってもしょうがない)。

カーテンコールで、右近さん隼人さん新悟さん巳之助さんが手をつないでぱっと出てきたのがすごくよかった。すごくこの演目にふさわしい光景だったと思います。11月末まで長丁場ですが、どうぞみなさまご安全に!