「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」

映画が公開されたときに「やっぱりこれは一度は見ておくべきなのかなあ」と思って見に行った記憶があります。というのもベルベット・ゴールドマインやヘドウィグなんかは、イエローモンキーの、っていうか吉井の、ルーツ的なところがあって、ファンの中にも見に行く、という人が圧倒的に多かったからっていう・・・ま、回りに流されたんです。ベルベットはそうでもなかったけど、ヘドウィグは話そのものよりも音楽がすっごいイイ!って思った印象があって、だからDVDは買ってないんだけど、サントラは持ってます。で、それを舞台化(っていうか、もともと舞台だけど)って聞いて非常に見たいなーと思っていたんですが、チケ取りの波に乗り損ねているうちにあっという間に完売してしまいアキラメていたところ、東京公演が始まってみたらこれが絶賛の嵐じゃないですか。うわーんやっぱし見たいよー(結局流される奴)と思ってぴこぴこネットで探していたら、売り切れたはずのチケットがぴあにぽつーんと・・・。速攻で買いました。サントラも聞き込んで、準備は万端。

基本的にもう一人舞台、というか一人ライブのようなものなので、とにかく主役のヘドウィグを演じる三上博史さんに舞台の成否のすべてがかかってると言っても過言じゃないと思うんですが、キュートかつパワフルなドラッグ・クイーンぶりにもうめろめろ。お席が遠目だったので、正直メイクとかはあまり見えなかったんだけど、仕草の可愛さ・美しさは充分伝わりました。ちょっとアドリブっぽいところも、ライブのMC風味でよかよか。客席から合いの手に一呼吸置いて「いい?台詞って言うのはね、心を込めて言わなきゃダメなのよ!」と胸張ってダメだししていた姿に惚れましたわん。そのあと「あたしレベルになるには、まだまだね!」と言ったのもかわいかった(笑)
でもってなによりも歌がいい!!!うまい、っていう言葉より、伝わる、って感じだ。魂傾けてこちらにヘドウィグの心を投げてくれているので、ただでさえ美しい旋律やフレーズがびしばしきまくり。前半の楽しくキュートなヘドウィグににこにこ笑って見ていると、トミーに拒絶されてからのヘドの痛みがいっそう胸に迫りましたねえ。映画を見たときは、私はなんと言っても名曲「愛の起源」と「Wig in a box」がすっごく好きだったんだけど、今日の舞台では「EXQUISITE CORPSE」の叫びにやられまくりました。

ヘドウィグの嘆きからEXQUISITE CORPSE、続くWICKED LITTLE TOWNを聞いているうちに、映画版を見ているときはまったく思ってなかったことを考えたりして。最初のデコラティブな衣装からだんだんヘドに飾りが少なくなっていって、最後に脱ぎ捨ててトミーバージョンのWICKED LITTLE TOWNになる。それを舞台ではひとりの人間が演じているということもあってか、すべてが「トミーが語る自分探しの物語」のようにも見えるのだなと思った。あの舞台は基本的にヘドがトミーのライブ会場の近くでやっている、しょぼい会場と観客はそのお客さん、みたいな構造で進められるけど、最後にトミーが出てくることによって観客はトミーのライブの観客でもあるとも言えますよね。あの倉庫の壁をはさんで表裏一体になっているというか。映画を見たときは、ヘドウィグはトミーと出会ったことで自分探しの答を見つけたけれど、トミーが片割れであるとは思えなかったんだが、舞台を観ていてこの二人は背中合わせの「同じ人間」なんだなあってすごく思ったんだよなあ。トミーもまた、カタワレを探しているんだよなって。だからあの映像で二人が重なるのはちょっとくどい説明だとも思ってしまったのだけど。パンフを読んだら三上さんが、どのような解釈があってもいい、みたいな話をしていて、確かに見る人や視点によって幾通りもの受け取り方があるんだろうなあと深く頷いてしまいました。

本当に何度でも言うけどめちゃくちゃ曲がいいので、その歌のパフォーマンスが舞台でもすごくポイントを占めてるんだけど、いかんせん残念なのが芝居用の会場は音響がねーー!って点かな。ドラマシティ普段はそんな悪くないと思うけど、スピーカーが大音響用のスピーカじゃないっつーか、いたずらに耳が痛くなるだけで体感できる音じゃないんだよなあ。やっぱりこの芝居は音を聞かせるところでやってもらいたかったな〜って気がする。いい音で、できればスタンディングなんかで飛び跳ねられたら楽しいだろうなーー!と思った。Wig in a boxで踊りたい!ANGRY INCHでヘドバンしたい!!今日はカーテンコールで1曲だけTEAR ME DOWNをやってくれて、観客総立ちでこぶし振り上げまくったのが非常に楽しかったので、よけいなんか、寝た子を起こすような結果に・・・(笑)