「マシーン日記」

12年ぶりの再演。いやー、めちゃくちゃよかった。めちゃくちゃよかったんじゃないでしょうか。思いもかけずB列が最前で、先にご覧になった方が「水防止で毛布配られますよ、かからなかったけど一応お気をつけて〜」とツイートされてたのに「2列目だからいいや」とか思っていた私です。でも水はかからなかったわ!つーか普通に毛布あったかくて助かったわ!
以下畳みませんが、観るまで何にも知りたくない!という方は回避がおすすめ。

12年前に観たときは、自分のなかでどっか男と女のラインで観てたんだなーと今回観て改めて思いました。四角関係、まさに、こんなにも男と男、女と女の物語でもあったんだな。むしろ、そっちがすべての出発点でもあったんだな。ミチオが何回も口にする、鎖をこれ見よがしにちらつかせての「これじゃな〜」の奥底にある優越感のようなものが滲んでみえて、だからこそサチコが「あいつ(アキトシ)はあんたをここから出す気がない」と告げたあとの「ほら驚かない…!」という台詞が響く。そのサチコとケイコの力関係もまた凄まじくて、「謝ってほしいんですよね〜」のシーンのじっとりした温度、ミチオに対する「先生にしたこと全部して!」という台詞にも、女と女の関係性がこんなにも滲み出てたのか、と思い知らされる。

そんな歪んで捻れてどうにもならない関係性を描きながら、全編にわたって笑いと悲惨さが常に同居しているっていうのがほんとすごい。ひっきりなしに笑ってたよわたし。殴られても笑ってたし切られても笑ってたし折られてもどこかで笑ってた。なんなんだ。人間ってこええよ。多分私、もう一回観ても同じところで笑うと思う。それがどんなに悲惨でも。

そしてこの4人のキャスト!もう!ほんと全員の前に跪きたい。もともとオリジナルキャストだった片桐はいりさんも含めての総取っ替え、そういう意味ではリエさんにかかる期待はハンパなかったんですけど、でもキャスティング聞いたときに「その手があったかー!」とは思ったんだよね。その期待に応えまくってるよーかっこいいよリエさん!時々猛烈に「女」が匂い立ってくるところと、ほんとにマシーンなところがあって。あの「あたしがレトリック使わないの知ってるよね」はゾクゾクしたな〜!鈴木杏ちゃんも、完全に愚鈍な女の佇まいを見せていて、かと思いきやあの終盤の牽引力ったらほんとスゴイの一語に尽きる。

オクイさんはふくすけに引き続いての松尾さんのやった役を演じるという、演出家の期待感ハンパないですよね…いやもう出てきた瞬間から正解でした。少路さんとのバランスもすごくよかった!この中では比較的「まとも」なことを言っているだけに、まっとうに「おかしい」感じがより浮き彫りになるというか。ほんとあの兄弟観てて涙が出そうになろうとは、だよ。驚いちゃったよ自分でも。

4人のまさに体当たり(体当たりってのはここまでやって初めて体当たりなんだよ!と言いたくなるぐらいの全員満身創痍っぷり)の芝居を目の前で目撃した2時間。いやーやっぱりね、4人のパワーバランスがいい、力が拮抗してるって大事なことなんだなーってほんと思いましたよ。最後どういうふうになるか知ってるのに、カタルシスが違ったもんね。そしてこれだけ時間が経っても、そしてキャストが入れ替わっても揺らがないこの脚本の強さたるやだよね。褪せないにもほどがある。素晴らしかったです!