- 京都芸術センターフリースペース 全席自由
- 作・演出 前田司郎
昨年東京公演時の好評が記憶に新しく、京都までお出かけ。チケット代1500円、やっす!ここまで出かけてくる電車賃の片道代よりまだ安い。昨年夏の「家が遠い」の演出に対して京都芸術センター舞台芸術賞を受賞されたそうで、それが今回の京都公演に繋がったとか。
若草物語骨格な4姉妹のお話、という予備知識はありましたが、まああまりそれとは関係なく。しみじみと良い舞台。子供の頃と、ある程度成長してからの4姉妹が、病弱な三女のベッドを中心に描かれていきます。子供の頃の理不尽で突発的な怒り、「言いつけたら殺すよ」とか「バカズミ!」とかの口げんかの言葉が妙にリアル。三女の病気がなんなのか、どのくらいの病状なのか、それらは一切語られませんが、ただその狭く細長いベッドの上にしか、彼女の世界がないことがじわじわと胸に響いてきます。成長した4人のシーンで、久しぶりに東京から帰ってきた次女を含めて4人姉妹がベッドの回りで語らうシーンがありますが、晩ご飯の相談をしながら妹に「正しい思いやり」をかけつつ去っていく3人と、それを見送る三女。このシーンの何とも言えない寂しさたるや・・・!家にいるときに聞こえてきたピアノをMDで再現させながらベッドに一人残る彼女の姿に胸が詰まりました。あのあと、お父さんが来てくれたのが本当に私も嬉しかった。
病気の三女を残して、嫁には行けないと言う長女、東京から戻ってくるべきかしらという次女、東京への進学は諦めるべきだと考えている四女。ああ、そうだ、「○○のために」だ。○○のために、という言葉は、いついかなる時でも美しくない。ないのだけど、それに頼らざるを得ない自分というものへの歯がゆさ、もうどうか私のことなんて忘れてほしいの、そうは出来ないなんてことわかっているのだけど。忘れて欲しくて、でも取り残されたくはないの。最後のシーンの涙が、いつか遠い日に自分が流した涙のようで切なかったなあ。私に構わないで、私を構って。
「家が遠い」の時も思ったんだけど、ラストの切り方がちょっと独特で、その辺感覚の合う合わない人居そうな気がします。私も、最後もうちょっと方向を指し示して欲しいタチなので、若干のとまどいはありますがまあそれは、好みの差かな。
役者さん、特に三女役の端田新菜さんがあまりにもハマリすぎていて、そのリアルさにあっという間に劇世界に引き吊り込まれた感じ。4姉妹は本当にすごくいいバランスだったなあ。会話の微妙な可笑しさや、子供っぽいやりとりと大人な彼女らの切り換えも見事でした。
今回の会場だった京都芸術センターフリースペースは小学校を改修した建物で、なかなか面白い雰囲気が味わえます。教室の下駄箱に置きチラシがあったりとか、おいしそうなカフェも一室を占めています。上の写真は、そのカフェの前の廊下。レトロな小学校の空気が味わえて良かったですよん。