「尺には尺を」子どものためのシェイクスピアカンパニー


毎年夏のお楽しみ、今年も来ました「子どものためのシェイクスピア」公演!今年の演目は「尺には尺を」。問題劇とよばれるものに分類されるそうで、このカンパニーが取り上げるまでまったく知らなかった無知な私。おかしいなー、「一冊でわかる!シェイクスピア作品ガイド37」読んでるのになー(あんちょこに頼ってる時点でなにをかいわんや)。

ウィーンの街の公爵ヴィンセンシオが、旅に出ると偽って身を隠し、その間に権力の座に着いた男の行動や家臣、庶民の行動をじつはこっそり観察しているという筋書き。束の間の権力の座に着いたきまじめな男は四角四面に法律を適用することに意義を見いだし、淫売宿を取り壊し姦淫罪で男を死罪にしろと言うが、その男の妹イザベラが嘆願に訪れると、彼女の清廉潔白さに恋をして、あろうことか「兄の命を助けたければ私と寝ろ」とセクハラ発言。さてイザベラはどうやって兄の命を救うことが出来るのか?

公爵ヴィンセンシオが計略を練り、最後の裁きの場で「顔を見せろ!」といわれて出てくるあたりはそのまんま「遠山の金さん」状態で、そのあとの「えええ!」という展開も含めてかなり強引な感じがします。っていうかマリアナとアンジェロはいいのかそれで・・・と誰もが思ったのではないでしょうか?パンフレットの松岡さんの解説によれば、イザベラがヴィンセンシオに求婚されたところで舞台は終わるそうで、それに対するイザベラの反応は戯曲には書かれていないらしい。ほーーーーお。いいねいいね、そういうの大好きです。今回のカンパニーではイザベラは「ごめんなさい」するわけだけど(台詞じゃなくてぴょこん!と頭を下げてしまう)、返事を描かずにカットアウト、って手もアリなのかな〜と思う。ヴィンセンシオも同じ穴の狢・・・みたいな感じで。

イザベラは兄の命と引き換えに自分の操を要求されて「お兄さまには覚悟を決めて頂きましょう」となるわけだけど、ここは軽妙洒脱にシェイクスピアを料理するこのカンパニーの面目躍如、大爆笑のシーンに仕上がってましたねえ。クローディオの「やっちゃえよーーー!」とか大好き、もう。序盤はなかなか芝居に入って行きづらい感じがあったのですが、アンジェロがイザベラに恋に落ちるあたりからすごく面白かったです。

アンジェロ役の山口雅義さん、堅物男が徐々に崩壊していく様子が絶妙でした。微妙にいやらしく、微妙に生真面目。山崎清介さんの女装も嬉しかったわ、おほほほ。ヴィンセンシオは、役柄としては自分は好きではないんだけど、伊沢磨紀さんにやられてしまうとかっこいいわかわいいわでなんだか公爵の味方をしてしまいそうですよ。

お馴染みのハンドクラップと群唱、毎回思うけどこの言葉のチョイスのセンスには感服します。すごく戯曲の世界に入っていきやすい。最後のちくりと刺す構成がまた見事。劇中でヴィンセンシオがアンジェロにいう台詞「早急には早急を、猶予には猶予を、類には類を、そして尺には尺を」の言葉の通り、観察には観察をもって報いるべし。

今回もパナソニックツアーで、破格の2000円で観劇させていただいたのですが、これはパナソニックツアーだからかもしれないけど非常に子供さんの数が多いんですよ、毎回。でもって殆どの子がすごく集中してきちんと見ているのだけど、やっぱり何人かはね、騒いでしまう子もいるわけで。今回、私の前に座っていた家族連れはそれはもう、普通の芝居ならありえない!という(何度も席を立って出入りを繰り返す、立ち上がる、喋る等々)感じだったのだけど、この公演に関しては私、「自分が子供さんたちのところにお邪魔して見せていただいている」感が根っこにあるからか、何が起こってももう「集中!集中!心頭滅却心頭滅却!」で乗り切ってます。それにね、休憩時間に子供たちがさっき舞台の上でやっていたハンドクラップを思わずやってしまったりするのを観れるのはこれまた非常に心愉しいものなのだ。というわけでね、来年もお願いしますよパナソニックさん!と言いたい私なのでございます。