「越前牛乳」カムカムミニキーナ

  • シアターBRAVA! D列10番
  • 作・演出 松村武

15周年記念ということで、劇団の代表作を再演、ということになったらしい。今まで何度も関西に来て下さっているのに足を運ばなかったことを深く反省しつつ、初カムカム。

牧場の少女ハイジと牛のドナドナ。合戦に巻き込まれて山のおじいは死んでしまう。ドナドナと共に一人で生きていくハイジだが、ある日枕元に死んだはずの山のおじいが!「市場へ行け、ドナドナを売れ。かけがえのないもののためにお前はドナドナを売るだろう。」一場へ向かうハイジの前に、二人の商人が現れる。越後屋は約束された幸福な未来と引き換えに、越前屋は呪われた過去の宿命と引き換えにドナドナを買おうと言う。ハイジはどちらにドナドナを売るのか?そしてその相談に乗るみのもんたよしのりの正体は、果たして!

と、真面目にあらすじ書くとこんな感じで、なんだその話はYO!と突っ込まれそうな気もしつつ、でも見ているうちに最後はわけのわからない高揚感があるのがすごい。普通にかっこいいもんな、みのもんたよしのり。松村さんはご自身でも「遊眠社に受けた影響が大きい」と仰っているけれども、確かに台詞のスピードとその熱さで観客を引っ張るところなんかは似ているかもしれない。

今まで客演では何度も拝見したことがありながら、カムカムに出ているところを見たことがなかった八嶋智人さん。いやあ、これが八嶋さんの底力か!と唸るほどに圧倒的。いやはやすごい。中盤にかなり長い松村さんと八嶋さんの二人のアドリブ合戦があるのですが、そのすべてに瞬時に反応する彼の舞台役者としての瞬発力に舌を巻いた。あれだけ確実に「面白い」ことを舞台で見せてくれるというのは並ではないよ!また松村さんと二人、本当に楽しそうにやるんだ。こういう「遊び続ける」シーンって絶対すごく厳しいものがあると思うんだけど、ちゃんと遊び切れているとこがすごいなって思いました。

清水宏さまも私は大大大好きなんですけど、今回は狂言回しの役割に徹していらっしゃった感じ。でも、独特の台詞回しで観客をちゃんと導いてくれていました。しみひろさまと八嶋さんのアドリブ合戦というのもちょっと見てみたい感じもしましたが。

あと、なによりも観ている間すごく幸せな気持ちになったのは、久しぶりに「劇団」というものの愛を感じる舞台だったなあということ。松村さんて、劇団を愛してるんだなあ〜ってすごく感じた。それに役者さんたちが皆全力で応えているのが気持ちよかった。こういう舞台を、もっといっぱい観たいものです。