「あらかじめ」

小野寺さんの作品はいつも気にしているんですけど、なかなか上京のタイミングと合わず見送っていたのですが、ひさしぶりに拝見することができました!この日は、お子様スペシャルデーのような日だったらしく、会場にたくさんのお子さまたちが!なので、普段の劇場の空気とはかなり違っていましたが、偶然八嶋さんのツイートでその情報を仕入れていたので、ならばそれはそういうものとして楽しもうと。八嶋さんもお子さま連れでいらしていたみたいですね。

役者の動きを見ているだけでも飽きさせません。背広と帽子とかばんだけであれだけ豊かなシーンを見せることができるんだからすごいよなあ。そんな小野寺さんならではの振り付けが冴え渡るのも面白かったんですが、円形のあの舞台をときにはリアルなサイズに、時には大平原にみせてしまうあの演出力に一番おどろいたかもしれない。中でも、とてつもなくミニマムだった世界が、役者の動きひとつでリアルサイズになり、あの円形劇場の外周までも舞台構造に組み込んでしまったのには舌を巻きました。ラジコンカーをここまで舞台の中で「見せる」物体として登場させたのは見たことがない。いやあすごい。

たった一瞬の出来事を、何倍にも何倍にも拡大して顕微鏡で世界をのぞき見たような感覚のある舞台でした。最後の終わり方がとてつもなく私好み。

藤田桃子さんや佐藤亮介さん、そして小野寺さんの身体性のすばらしさは言わずもがなですが、中山さんや宮下さんも違和感なくそのなかに溶け込んでいてよかったです。中山さんは最近ほんとにいろんな種類の舞台に顔を出してらっしゃいますよね。

客席は8割程度の入りでしたでしょうか。開演前に小野寺さんが舞台上にかけあがって挨拶をされました。被災者へのお見舞いの言葉、そして「来てくださったことに感謝します。がんばります」と。そうそう、青山円形にあがるエレベーター2基のうち、1つは節電のために運転を停止していました。はじめて階段であがったかもしれない。でも、そういえばたった3階の話なんですよね。なんであんなにかたくなにエレベーターであがろうとしていたんだろう。これもひとつの節電効果、かもしれない。