「冬眠する熊に添い寝してごらん」

上演時間約4時間(休憩15分)、なので時間ぴったりに始まります。着席はお早めに。正直、4時間という長さを聞いて観劇前から若干構えちゃうところはありましたね。長い芝居がすべからくダメとはいわない。でも、長さのぶんだけハードルがあがるのも否めないところ。

100年前の伝説の熊猟師、若き名人と言われた熊撃ちと、オリンピック射撃競技で金メダル確実と目されているその熊撃ちの子孫が、エネルギーというものを挟んで交錯する。かつては原油、今は原子力

冒頭の、熊と猟師との「契り」で幕を開けるあたり、「櫻の森の満開の下」の夜長姫との約束を彷彿とさせる感じでよかったですし、「熊ならざるものを撃つ」その瞬間が交錯していく展開も個人的には好きです。しかし、その糸だけを頼りに観るにはやはりなかなかキツかったなあという印象。私はどうしてもストーリーテリングを追いかけてしまう習性があるので、そこが途切れてしまうと自分の集中力のほうも鈍りがちになってしまうというか。観念的な長台詞がかなり多く差し挟まれるのですが、かといって物語を放棄してその一瞬一瞬に立ち上がってくる情景や抒情に酔う、というところまでは残念ながら至らなかったです。

戯曲そのままを効果として(あれは読んで下さいって意味じゃないと思ってます)映し出す演出が随所にあったんですけど、文字じゃなくて役者に集中しようと思ってもどーしても文字がそこにあると読んじゃうので、ちょっとジレンマでした。あと2階席で観たというのもあるかもしれないですけど、わざとノイジーに作っているところはほんとに声がかき消されて(マイク使ってもいまいち届きにくいんですよねー)ちと残念だったかなー。

好きなシーンもけっこうあったんですけど、中でもよかったのは鳥屋野潟のラブホテルで一とひばりが「密会」するシーンかな。もちろんセクシャルな匂いのあるシーンですけど、そのどろっとした感じと、台詞の硬質さがすごくいいバランスで成立していて、観ていて楽しかったです。薬売りと熊撃ちのふたりのシーンもよかったなあ。

イーハトーボと連続して井上芳雄さんの舞台を拝見しましたが、テクニックももちろんですがまずなによりパワーを要求される役所を力強く演じていらっしゃって、王子、すっかりたくましくなって…!とうっとりしました。対する杏ちゃんはやはりさすが。詩人ということでなかなか厳しい役ではあると思うけれど、当たり前に成立させているところがすごいよ。勝村さんはもちろん安定の出来ですが、ファンとしてはもうひとつふたつ、しどころが欲しかったところでもあり。上田竜也くんは前半のかわいさ爆発もたのしいけれど、役としては後半がキモだと思うので、そこでもう一声こちらをねじ伏せてくれるような力を見せて貰えるともっといいかなーと思いました。