「つんざき行路、されるがまま」

判で押したような生活を続ける男のもとへ、突如現れた美しい女。その女を妻とした男の生活は満たされたものにかわっていく。しかし妻はある日忽然と姿を消した…って、すわ「ゴーンガール」系の話か*1とと思いきや、ものすごい勢いで話のカーブが予想外の方向に切れていくので、うお?うお!と物語に気持ちよく翻弄されながら見ました。

人の吹く口笛をよすがにして生きる女、孤独ゆえの口笛からその女に愛された男。ふたりが晩酌の最後に乾杯して、「好きだね、最後に乾杯するの」「僕はこれからいろんなことを君と一緒に終えたい。ふたりで軟着陸するみたいに人生を送れたらいい」っていうとこ、すごくステキだったんだけど、男の世界が「ぼくときみ」だけになった途端に女は去っていくっていう。

個人的に、吹子を追いかけての冒険行、ツタヤとゲオが血で血を洗う抗争を繰り広げる中央線沿線、国境、奥多摩湾といったキーワードで彩られた平行世界にすごくわくわくしたし、アパートの大家の無闇な「甲は乙に」攻撃、ブラジャーだけをたよりに吹子を捜し、自分はブラジャーと暮らしていたんじゃないかと疑心暗鬼になるくだり、職場の後輩がその平行世界で言う「去っていったあなたの中で『あいつはどうしているんだろう』って思われる、その小ささががまんできなかった」という台詞とか、ところどころでぶっ込まれてくるメタ的な世界がすごく好みでした。なんつーんだ、あのスズナリの狭い舞台のうえで「世界」が作られてる感じとでもいうんでしょうか。

個人的に周囲が引くほど笑ってしまったのが、途中で出てくるDVDが「キャプテン・アメリカ/ウィンターソルジャー」だったことです!まさかのそこきますか(笑)今際の際のネタバレは本当のネタバレです!そして「映画館で見た」「面白かったぞ」と言って貰えて福原さんありがとう!という気持ちに…(お前は誰だ)

粟根さんをこんなにがっつり拝見したのも思えば久しぶりのような気がしますが、普段新感線では抑え気味の、クールな役柄が多いので忘れがちだけど、あの集団の中であれだけ長く存在感を発揮し続けている人がパワープレイヤーでないわけないのだった。そのパワーを存分に感じることができたなー。あの聖子さんと力で押し合って押し負けないものね。ねじ伏せるものね。

自分以外、の世界のことなら考えられるんだ、って台詞がめっちゃよくて、一瞬胸が詰まりそうになったおれだよ。

聖子さん、どこか夢の世界の女も、現実の焼きそばパンの女も、似通っているのに醸す雰囲気がちがってすごかったなー。あの下着を手を使わずに脱ぐところ素晴らしすぎる。尊敬しかない。キャストみんなよかった、田村健太郎さんの、おバカなバンドマンと若社長が好きでした。かわいかっこよかったー

私の斜め後ろで演出家がご覧になっていたんだけど、ところどころめっちゃ笑ってらっしゃって、いい現場だ!と思いました(笑)

*1:つってゴーンガールまだ見てないんですけどね!