- 本多劇場 M列8番
- 作 ウィリアム・シェイクスピア 演出 宮藤官九郎
M&O play produceってことで宮藤さんが演出に専念したロミジュリです。脚本は基本的にそのまま、とはいえもちろん宮藤さんがやるので一言一句変えてないというわけではなくて、細かいいじりはありますが、逆に言えば細かいいじりしか変えてないです。変えてないのに休憩なしの2時間10分でコトを収めることができるのは、台詞を聞かせることよりも畳みかけること、畳みかけて勢いを殺さないことを重視したつくりになっているからだと思います。
シェイクスピアの嘆き節をすべからく「あ~あ」というセリフにその時々の温度を濃縮させちゃうのすげえなーと思いました。ああいう思い切りは宮藤さんだなーという感じ。セットがどこかおままごと風の積み木を形を変えて使うようになっていて、おとぎ話ふうでもあり、ふたりの幼さが際立つ見せ方になってた気がします。立ち回りも割とあるけど、スペースがそれほど広くないのであれは結構大変そうだな。ティボルトとマキューシオの決闘のところで勝地マキューシオが剣を取り落としてしまい、そのあとの別役でのシーンでさんざんいじられるという事態に(笑)グイグイいじる今野さん、落ち込む勝地くん(舞台上で落ち込むな)、かばう皆川さんというトライアングルに楽屋内勢力図を見たかもしれない。
本当にものすごくまっとうにロミジュリだったので、どこか宮藤さんならではの脚色があってもよかったなーと思ってしまうのはしょうがない。いやホント、ドストレートでしたもんね。この戯曲を上演するときに必要なのは何よりも「青さ」なんだなーと思いましたし、「あっという間に50になる」(いやもうなってるけどね)三宅さんがその青さを体現できてるのがすごいよ。森川葵さんのジュリエットも、台詞の立て方とか正直全然ダメなんだが、青さのあるジュリエットという一点で及第点だったのであまり気にせずに見られた感じ。
勝地くんは演出家の求めがあってゆえとは思うも、ちとうるさい(笑)いや、どれだけうるさくてもいいんだけど、そのぶん三幕一場をキメてほしい俺がいる(前半のフリはめちゃくちゃ笑いました)。あそこで最後まで「これは堪える」と言いながら「なぜ止めた、おまえの腕の下から刺されたんだ」「モンタギューもキャピュレットもくたばるがいい!」ってところ、ハイライトなんですよ。私の。誰もが思うであろう諸悪の根源ロレンス神父がトモロヲさんで、二人の結婚のときもジュリエットの薬を思いつくときもなぜか悪魔憑きみたいなアクションになるのがおもしろかった。いや確かに悪魔の思いつきなんよね、結果あいつのやることって…。
そういえば音楽が向井秀徳さんでした。最後の最後で気がついた。なんという贅沢な!
いわゆる「イケメン」じゃないロミオではあるんだけど、今回の芝居でそういういじりというか、ギャグというか、そういうものは一切入れずに、恋するふたりの青さとばかばかしさとだからこその幕切れの切なさに全振りした見せ方だったのがすごくよかったと思いました。