「七芒星」 新感線

「芒」 ①未熟なさま。②年の名。③見定めがつかぬさま。(角川新字源より)

マイ・ベスト新感線はやはり「髑髏城」で、その髑髏城でどこが一番すきかと言われるとそれはもう問答無用でじゅんさん演じる兵庫の台詞「お前が雑魚だと思ってる連中の力、見せてやるぜ!」なんですよね。今回のお話の基本にあるのはそういうスピリット。だから、私はこの話大好きです。

鏡皇新羅を倒した七宝星、20年後の新羅の復活、七宝星同士の因縁、金令女と天鈴姫の関係等々、物語の「そもそも」の始まりから現在に至るまでのスパンが長いだけに、説明セリフが割とあるにも関わらず伝えきれない部分が多いところはちょっと難点かなぁ。いやそれでもかなりコンパクトに仕上げてきているとは思うけど。二幕に入ってもまだ知らない単語が出てくるというのはどうなん、とか思ったりもしましたが。

今回は以前勇者だったが新羅の力によって死人の国から蘇り、悪を働く「七宝星」側に新感線の主力キャスト(古田・粟根・山本・逆木など)を、七宝星に縁を持ち彼らを倒すべく立ち上がる七芒星に新感線の若手キャスト(インディ・礒野・中谷・保坂・杉本など)を配し、話の構造的にもキャスティングの構造的にも「弱いものが頑張って強いものに挑んでいく」という形になっていたわけですが、正直、当たり前のように七宝星の方が強いし目立つ。衣装も派手だし。だからこれ下手すると、主であるはずの七芒星の印象が薄っぺらいままに七芒星が勝ってしまう、という気持ちよさもへったくれもない舞台になる可能性あると思うんだよねえ。でも、物語の一番の肝を七芒星が「勝つ」ことではなく「負けても怖くても立ち上がる」ことに持ってきたことで凄く逆に説得力が出ているのではないかなぁと。どこからどう見ても「本当に弱い」だけに、「負ければ逃げる、怖ければ逃げる、でも諦めない」と語る姿に非常に胸打たれました。特に大阪でも終盤になるにつれて、役の構造と現実の構造が微妙に重なって、なんともいえないプラスアルファの迫力が七芒星を演じた役者たちにはあったような気がします。ラストでは「芒」の文字が示すように、未熟で、なんだかよくわからない七人の理屈を超えた心意気に涙がこぼれてしまいました。

一幕の中盤から二幕の頭ぐらいまではほとんど小ネタ集と言ってもいいほど細かいくすぐりネタが多いんですが、そんなところに時間と情熱と神経を注ぎ込む新感線らしさもファンには嬉しい。個人的には野田秀樹のマネと振りも完璧なガラスの十代がツボりまくりました。高田聖子さんは97年以来5年ぶりのいのうえ歌舞伎ご出演だったんですが、新羅としてはさすがの迫力、特にクライマックスで一人残されたあたり、本当に悪そうで見事でしたね。面白シーンへの参加が少なかったのでご本人としては物足りなかったかも?古田さんは・・・太い(笑)あ、いやいやそれでも充分殺陣のシーンなどでぐっと来る瞬間があることを考えると、この古田マジックは無限大なのか!?とかも思ったりしますが、しかし本当にもう少し痩せてはいただけないものか(涙)しこ踏む姿が似合いすぎです。アツヒロくんは大阪楽日では声が枯れていて苦しそうではあったんですが、大阪千秋楽では揺光との最後の対決シーンで、その声を振り絞って向かっていくところなど、完全に古田さんを押し切っていて見事でした。身体も良く動くし、どんどんいい役者さんになっていくようで楽しみ。

それからこれは大阪千秋楽のみの感想ですが、七宝星はじめとするベテランチーム、千秋楽だからって余裕かましすぎです。遊びすぎ。噛みすぎ。間空きすぎ。逆に七芒星の七人は千秋楽に向けてどんどんうまくなり、楽日だからこその気合を見せてくれていて素晴らしかった。おっちゃんらもしっかりして・・・。

    • 2003/01/13 11列38番