「髑髏城の七人」@大阪

さて、大阪版です。今回は席が間近だったってこともあって役者さんの表情を主に観察。女性陣はホント、細やかな表情がいいです!特に狭霧の佐藤仁美ちゃんは、狭霧の役作り自体はとくに目新しいとは思わないんだけどとにかく感情が乗ってらっしゃるのでマジもらい泣きしてしまいます。でもって蘭が!蘭が!かっこえくなってる!あ日本語おかしい!っていうかマジでかっこいい!今日一幕の最後で「すべて流して三途の川に捨之介か・・・強いな、お前は」ってセリフの時に一瞬顔を歪めて泣きが入る表情になっていて、それが捨て切れぬ自分自身への悔恨を痛切に感じさせて思わず涙が・・・!蘭丸になったあとも捨との対決の時が絶妙にかっこいい。「あの方は早駆けで行ってしまわれた」ってところをうっとりと夢見るような顔で言ってるのも◎。

でもって蘭兵衛が出のときから常に蘭の花を持ってるんだけど、これをラストのラストで捨が「よせよせ、ガラじゃあねえや!」でぽーんと狭霧に投げるのね。で、狭霧は前を向いたまま静かに「もう決めたんだ」とひとりごち、捨のあとを追うんだけど、ふと振り返ってその花を天魔王の仮面に供えるんだよ!ギャーーーー!どう!どうこの演出!舞台には天魔王の仮面と蘭の花が一輪ですよ!でもってしかも狭霧が去る前には捨の傘もあるので、そこで捨・天魔王・蘭が並ぶというか、うーんうまいこと言えんな、そこで三人の信長の影達が浮かび上がる感じがあってそれもまたgood!いやもうあの演出ひとつで相当深みを増した感じよ!いのうえさん大阪で思いついてくれてありがとう!これが東京だけだったら泣くに泣けませんよ!

うーんしかし、何遍見ても面白い。大阪では特に贋鉄斎と三五が良くウケていたような気がしますが、でも無界炎上からあとはもう三五で拍手、贋くの一で拍手、草刈り鎌で拍手、百人斬りで拍手ともう大盛り上がり。これよーーー、これが私の好きな髑髏城よーーー!って感じ。古田さんの殺陣はやっぱしかっこいいしねえ!いくらデブっても、あんたは捨之介だぜ!どんな好きな芝居でも3回見たら飽きる私ですが髑髏はひょっとしたら飽きないかも・・・!とすら思わせます。ああ、ほんまにええ芝居や!



結局東京・大阪あわせて4回見ました。あー面白かった堪能した。思うに私の「好き要素」がこの芝居にはぎゅっと詰まっているんだろうなあ。笑えて泣けて面白くて。大阪での後半は特に女性陣(狭霧・極楽・蘭)が憑依度が高くて、彼女らの感情に芝居が引っ張られるようなところもあって予想外の収穫という感じ。特に狭霧と極楽は直球でぶつかってくるからそれがツボるともう後半泣けて泣けてしょうがない。蘭は新演出が加わったことで、「女ならではの蘭」になってる気がする。水野さんが格好良ければ格好いいほど、逆に女の思いにぐっとくる感じだね。

以下個人的名台詞。

「教えてくれたらこの羊羹をやろう。時折しょっぱいがおおむねえらくトゥーンと甘い。」
贋鉄斎のセリフというより、ザ・梶原善という感じで大好き。毎回このセリフが来るのが楽しみでしょうがなかった。
「ひょっとしたら今一番武士(もののふ)らしい武士かもしれんのう。・・・もうすこし厄介になりますぞ。無界屋蘭兵衛殿。」
ここの佐藤さんうまさ爆発って感じですげーーいい。手を軽くとん、と叩くような仕草もgood!
「背中の太刀は男の伊達、拳で殴るは男の意地」
ギャーーーーー!!!!兵庫かっこいいいいいーーーーー!!!!
「さて、この無界屋蘭兵衛は一体何を守るのか・・・女を捨て昔を捨て、殿を捨てて拾った命だ。」
せつねー・・・。捨て切れぬ蘭兵衛が哀しいのう。
「回しました!」「頂きました!」
気持ちいい。磯平最高!
「できるかな。・・・俺は裏切ってばかりで闘ったことがないので、自分でもどれぐらい強いのか、よくわからん。」
大阪公演で異様にウケの良かったセリフ。エセ円月殺法も含めて爆笑&拍手の嵐。
「百姓だろうが大名だろうが、死ぬときの目は皆同じだ!」
なぜかここだけつか芝居になる亨さんが素敵(笑)
「俺は俺以外の男が女泣かせるのを見ると我慢できねえんだよ」
ザ・捨之介って感じかしら。ここで狭霧ちゃんが本当に泣いてるので、余計この優しさにぐっとくる。

兵庫達が立ち上がるシーンからラストまで、それぞれの戦い、百人斬り、天魔王との対決、そしてあのシルエットと、後半のこの構成・盛り上がりは本当にツボでツボでしょうがない。笑えて楽しくて、しびれるほどカッコイイ。髑髏城は本当にいのうえ歌舞伎のひとつの到達点だと思う。まったくもって、堪能させていただきました!