「四月大歌舞伎」昼の部

前日いろいろあってはしゃぎすぎたため寝過ごしてしまい十種香に間に合いませんでした(反省)
というわけで「熊野」から観劇。予備知識なしで見たんですけど、能が元になってるんですよねこれ。宗盛が心動かされるあたりの機微がぴんと来ずではあったけど、でもあのお二人が舞台に揃っているだけでこまいことはよろしいやん、という気になるほど絵になりますね。幕切れの宗盛の表情はよかった。
「刺青奇偶」。これ、勘太郎くんが「うちの父が大好きな芝居、家を出るときから博徒の顔になっている」と書いていたのを読んで以来いつか見てみたい、勘三郎さんと玉三郎さんで、と思っていたので念願かなった!という感じです。大好きなだけにめったにかけない、という勘三郎さんのお言葉通り、今回9年ぶりの上演。いやでもね、私、個人的にベタベタなドラマって好きじゃないんですよ。でもこんな、もうまさにベタベタのベタな話で赤子の手をひねるように泣かされてるからね!すごいよ、なんつーかもう、芸の力ってすごい。幕開きに玉三郎さんは板付きで居て、灯籠にもたれかかっているんだけど、もうその後ろ姿だけで「何かを諦めてしまったんだこのひとは」ってことが伝わってくるのよ!おそろしいよ!それになんといっても、この芝居の中でお仲が半太郎に刺青を彫るシーンはすごいですよね。あれだけの時間、台詞もなく、動きも殆どない(刺青を彫るだけだから手しか動いていない)のに、観客の集中力を一瞬たりとも逸らさせないって生半可な技量じゃできません。六地蔵の桜の場での政五郎と半太郎のやりとりも素晴らしいし(この仁左衛門さんの男前っぷりったら!)、いやーほんと、この座組で見られてよかった。堪能!