普通においしい

孤独の中華そば「江ぐち」

孤独の中華そば「江ぐち」

何度かここでも紹介したことあると思いますが、絶版になっていた「小説 中華そば『江ぐち』」が単行本で復刻。しかも元の本+文庫本で書かれた後書き+以後の後日談まで収録!とこりゃもう買わないではいられない。
帰りになんてことないファミレスで晩飯食べながら読んでた(後日談の部分を先に読んでたの)ら、もうあれだ、さんまさんの「引き笑い」ならぬ「引き泣き」みたいな、「ヒッ...ヒック」って音をあげて嗚咽しそうになりました。もう私の涙腺を破壊するもの純度100%でできている、これは。
今更紹介するまでもなく、これは三鷹に実際にある(あった)「江ぐち」というラーメン屋について、久住さんとその仲間達が、ただ想像を巡らしたり、妄想したり、「江ぐち」の隅々を勝手に研究したり、そんなことで異常に盛り上がったり、そんな「端から見ればどうでもいいこと」がこれでもか!と詰まっています。
でも本当に何度読んでも楽しいし、笑えるし、そしてその「端から見ればどうでもいいこと」に深く心を寄せたことのあるひとならきっと共感するところがあるその想いの数々が、何とも言えず幸福な気持ちにさせてくれんですよね。
ほんの小さなことでも、物事は楽しみようによってはすごく楽しい、ということが、ここまで見事に、ひとつのエンタテイメントとして成立している本もなかなかないのではないでしょうか。
本の雑誌」ふうに言えば、ぐりぐりの◎でおすすめです。
途中に何度も出てくる、久住さんの「普通においしい」という言葉が何とも言えず、胸に迫るものがありました。
「世間」を笑い飛ばせ! (ドン・キホーテのピアス14)

「世間」を笑い飛ばせ! (ドン・キホーテのピアス14)

久しぶりに買いました、ドンキホーテシリーズ。これやっぱtwitterの影響だよなあ。
しかし!久しぶりに読んで思ったんですけど、いやこれはうすうす感づいていたことではあったんだけど、ほんっっっとに私って鴻上チルドレン、いやこの言葉は適当じゃないけど、まあああもう自分も気づかないようなところで「鴻上イズム」が身体と心にしみこんでんのね。ほんっとそれを実感しました。
特にこの本の中で、鴻上さんが「インターネットに文章を書くこと」を主題に書かれているいくつかの文章は、「あ、あー?え?そちらも?まあ奇遇で」じゃないけど、えっなんで私が考えてることがわかるの鴻上さんっていうかいやむしろそちらが親か・・・そうか・・・そうですよね・・・って感じ満載でした。なんか汗かいたわ。結局お釈迦様の掌でぐるぐるしてるだけなのな、俺!
すばらしく強度を持った文章が綺羅星のごとくなんですけど、中でも「あなたを知らない「社会」に向けて文章を書くこと」と題された回はほんとすげい。そこで紹介されてたんだけど、これをふくらました「空気と世間」もこりゃ読んでみなければいかんばい
「空気」と「世間」 (講談社現代新書)

「空気」と「世間」 (講談社現代新書)

最後に本の中の一節を引用。

僕たちは、残念なことに幸福よりも不幸に敏感です。肯定よりも否定が得意です。何かの作品を否定することのほうが、肯定するよりもはるかに簡単です。で、そういう方向なら、長文は簡単に書けるのです。そういう文章には、残念ながら熱心な読者はひとりもつかないでしょう。だって、みんな否定にうんざりして、実は、肯定をずっと求めているんですから。