「わが闇」ナイロン100℃

初演が6年前ですか。キャストも同じで完全再演。じつはこういうの珍しい。個人的に芝居を見る期間が長くなってくるにつれて、どうしても再演よりも新作を重視してしまうというか「今まで見たことないもの」に重きを置いてしまうところがあって、「わが闇」は初演も文句なしに素晴らしかったし大好きな作品なんですが、「みる順位」としてはちょっと下がってしまうところもありました。でも今回名古屋公演があったのでね!ありがとうございます、ありがとうございます。

ものすごく鮮明に覚えてる部分とそうでない部分がもちろん混在しているわけですが、観ながら私が一番驚いたのは、この先の展開がわかっているにも関わらずまったく長さを感じなかったってことです。3時間20分?ほんとに?1幕だけで1時間50分(と初演の自分の感想に書いてありました)もあったなんてとても思えない。

ある意味露悪な寅夫さんとか飛石さんとかは、露悪なだけにきらいじゃなかったりもするのですが、初演の時は大鍋くんに超むかついてたなーと言うことを見ながら思いだしたり。でも今回はそれほどでもなかったな。そして初演の時は「どこで立子さん確変するんだろう…!」とこわごわ見ていたことも思い出しました。っていうか、「百年の秘密」でよりその思いを新たにしたところもあるけど、イヌコさんとリエさんはほんとにナイロンの双璧だね…!この2人の絶妙なバランスったらない。

伝えられなかった思いを言葉に託す、それも写真の裏という届くか届かないかわからないところに、届くか届かないかわからないからこそ託せるというシチュエーションはどうにもぐっときてしまうところがあって、中でも立子がとうとう欲しかった言葉を聞くシーンはたまらないですね。

滝本が最後に語るエピローグ。彼らがどうなったのかは、語らないでおきましょう。大事なのはこのひとたちがこのあとも生きていったということ。という言葉は、初演から6年を経た今だからこそより心に深く残る言葉になったなあと思いました。

それにしても、6年前の時点で「舞台における映像という点ではナイロンは他の劇団を100馬身ぐらいリードしてる」と書きましたが、そのリードが今もってまったく覆ってないというか、ますます引き離される一方なのでは、と改めて思いましたね。