「スター・トレック BEYOND」


これも全米公開は夏真っ盛りの7月!まーちーかーねーたー!春から夏にかけてのいわゆるアメコミ超大作(シビルウォー、BvsS、アポカリプス)がいずれもヒーロー同士の対立構造を軸にしていて、対立構造嫌いじゃないどころか大好きな私でも若干食傷気味ではあったので、アメコミではないけどそういう構造と無縁のスタートレックに期待していました。期待していたのはスコッティ役で出演もしているサイモン・ペッグが脚本にも参加すると報じられていたのも大いにあります!

リブート版スタトレとしては3作目で、3作目の利点を大いに生かしている脚本で楽しかった!1作目と2作目を監督したのはJ・J・エイブラムスで、ケレンという意味では確かにJJ版は見せるものがあるし、なにしろJJはエンタープライズ号をめちゃくちゃかっこよく撮ってくれるので、そういう意味ではSF超大作らしい空気があったと思うけど、ケレンと大味は紙一重という部分もなきにしもあらずなんですよね。なので、前2作と同様にケレンを推し進めるとケレンがインフレ起こしちゃうおそれもあったんじゃないかと思う。そこをペグちゃんの脚本はうまく世界観を凝縮して見せているなー!と思いましたし、誰が見てもとっつきやすく、わかりやすく、そしてずっと見てきた人にはそれぞれのキャラクターへの思い入れをぞんぶんに叶えてくれる見せ場があり、シリーズ物の醍醐味だよなあと思いました。3作目ともなると、キャラ同志の衝突、みたいな部分はもはや書く必要がないし、最初にエンタープライズ号のコアメンバーをそれぞれ二人ひと組に分散させるあたり、さすがブロマンスをペグちゃんはよくわかってらっしゃる!と言わざるを得ない。そしてもうひとつ、安易に主要キャラの死を書かないところも好感度高い!

イドリス・エルバヴィランで出るよと散々ニュースで見ていたのに、正体明かされるまでそ、そうか、こいつが…!と気がつかなかった私はいいお客さんです。いやこの年になるとね、もはやネタバレが怖くなくなってきつつある。なぜなら、見る頃にはすっかり忘れているからだ!

自分の行く末を見失うカーク(でも心中悩んでいるだけでバカな行動を起こすわけではない)、生き方を考え直すスポックが、カークはもうひとりの「自分かもしれなかった男」と対峙することで、スポックは彼にとってはまさに嵐のようなカークの生き方に添うことで、自分の立ち位置を取り戻していくのも良いし、なんといってもあの、古いガジェットで一発逆転っていう、いやーーどうもごちそうさまですーーー!!としか言えない楽しい場面。あそこ、日本で「マクロスだ…」って言われてるの、ほんとわかります(笑)

スポックとボーンズの組み合わせの楽しさ(ぼやきマッコイがこれでもかと堪能できる!)、カークとチェコフのかわいらしさ、スールーとウフーラの頼もしさ(今回のスールーまじかっこよすぎ案件)、ジェイラとスコッティの面白さなど、全方位スキなしでキャラが立っていて見所満載でした。

スタートレック50周年ということで、オリジナルシリーズへの敬意が感じられる脚本で、それも往年のファンには嬉しい部分だったんじゃないかと思います。そしてこれが遺作となってしまったチェコフ役のアントン・イェルチン。あの「ケプテン」がもう聴けないのは悲しすぎるけれど、でもこのスタートレックの世界では、チェコフくんはきっと元気に宇宙を飛び回っているに違いない。心からそう思える楽しい作品でした!