「シェイプ・オブ・ウォーター」

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ギレルモ・デル・トロ監督。今年のアカデミー賞作品賞受賞作!おめでとうございます!

子供の頃の虐待が原因で声を喪ったイライザは航空宇宙研究所で清掃の仕事をしており、豊かというわけではないが理解のある友人と一緒に日々を過ごしているが、ある日研究所にある生物が運び込まれる。その未知の生物とイライザは次第に心を通わせるようになる…というあらすじ。

筋立てだけ見れば、実はその生物は悪い魔法使いに姿を変えられていた王子様なのでした…というおとぎ話展開にもつながりそうですけども、決してそうではなくて、見えているものを見えているもののまま受け入れる人間と、完全であることに取りつかれている(そうせざるを得ない)人間がかなりドロドロとぶつかり合うので、個人的にはこれを大人のファンタジーというくくりでは見られなかった感じです。

登場人物は皆どこか完全ではない部分があり、それを受け入れているんだけど、ストリックランドだけは「完全であること」を証明し続けなければならない人間で、しかもその彼が指に受けた傷の欠損から文字通りだんだんと欠けて追い込まれていくのがなかなかキツかったっす。

冒頭の判で捺したようなイライザの生活の描写も、おとぎ話というよりもどこか生々しいのがよかったです。あと、イライザと魚人さんの心の通わせ方があまりにもまっとうで、まっとうであるがゆえにうつくしいラヴストーリーで、だからこそそこに自分が一番ノッていけない…ということを見ながら実感しました。どんだけラヴストーリーが苦手なのか自分!

イライザの靴の描写とか、古い映画館を独り占めにするシーンとか、あの卵をめぐるやりとりとかが特に好きでした。あとイライザを演じたサリー・ホーキンスはめちゃくちゃ手がキレイな!ストリックランドに手話で「クソ野郎」っていうとこのあの手の美しさ!ほれぼれしました。