「僕たちのラストステージ」

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「ローレル&ハーディ」として知られ一世を風靡したお笑いコンビの晩年を描いた映画。監督はジョン・S・ベアード。ケラさんが試写会でご覧になった後絶賛されていて、タイミングが合えば見たいな~と「見たいリスト」に入れておりました。

しかしこれ、見終わった後でさらに思う、原題の「Stan & Ollie」の素晴らしさ。「僕たちのラストステージ」はこう…いや原題のままというのが難しいのはよくわかるんだけど、結果的にネタバレしちゃってるともいえるしねっていう。どこに行っても、だれと会っても、必ず「ローレル&ハーディ」と呼ばれ称されてきただろうこの2人は、同時に「Stan & Ollie」でもあった、その部分を掬い取る映画に相応しいタイトルですよね。

こうしたお笑いコンビのバックステージもの、というところでつい持ってしまう先入観としては、たぶんステージの上とは違ってコンビ仲がめちゃ悪くて…でもってなんだかんだトラブルがありつつも舞台の上ではこいつしかいない的な…っていうのを考えちゃうんですけど、このふたりはステージの外でもすごく仲が良いんですよね。仲が良いというか、いつも「こんなことをやったら面白いだろう」って考えてて、その言語を共有できるのがお互いしかいない、という感じ。とはいえ、過去にいちど二人が袂を分かった時はあって、そのことは抜けない棘みたいにどこかに刺さってて、でもいつかまたふたりで映画をという夢があり、その資金稼ぎに巡業の旅に出るふたりが、最後までその「この言語を共有できるのはおまえしかない」ってことをお互いに思っていたんだなってことが、映画を見ているとすごくよくわかる。

またよかったのがそれぞれの妻が、こういう時によくある(これも先入観)悪妻というか、若い妻をもらってその彼女は浅はかで浪費家で…みたいな感じじゃなくて、妻同志決して馴れ合っているわけではないんだけど、夫への愛情と才能に対する信頼の揺らがなさが描かれているのがよかった。妻同志もどこか戦友のような佇まいがあって、素敵でした。

オリヴァー・ハーディを演じたジョン・C・ライリー、スタン・ローレルを演じたスティーヴ・クーガン、どちらも最高でした。私はとくにいつも飄々としながらも、文字通りペーソスあふれるとしか言いようのない佇まいを見せるスティーヴ・クーガンの素晴らしさにぐっときまくりました。ステージ袖で舞台に出る一瞬前のあのふたりの表情。ああいう場面にめちゃ弱いわたしだ。

めちゃ弱いと言えば、最後のクレジットに出た一文にぶん殴られてしまい、びえびえ泣いた私です。あれはアカン!あれは泣く!